温度調整器で使用している回路は「電子回路工作 素材集」で紹介している「温度調節器」と「電力制御器」を組み合わせた回路です。 最初は温度検出部と電力制御部を一枚のプリント板に実装したのですが、交流電圧の誘導が多く、電力制御のON/OFFでリレーがブザーのように振動してしまったので、二枚のプリント板に分離しました。 温度制御 ニクロム線による発熱の温度を制御するのにサーミスタを使用した温度制御回路を使用します。サーミスタは温度が上がると抵抗値が下がる特性を持っていますので、それを利用します。 サーミスタの使用可能温度はサーミスタにより違いますが、一般的に100℃から140℃位です。今回、制御したい温度は最高160℃位ですので、サーミスタを発熱体から少し離して設置し、サーミスタの上限温度を超えないようにします。サーミスタを発熱体と離すと外部条件により温度の制御は正確には出来ませんが、今回の目的ではそれほど正確に制御する必要はないので、十分実用になると思いました。しかし、これが失敗でした。発熱部の温度変化範囲が大きくなってしまいました。 温度制御回路は電圧増幅器を使用してサーミスタの抵抗値の変化を検出しています。今回の回路は交流回路の近くで使用しますので、交流の誘導により電圧比較回路の出力がバタつくことがあります。そのため、電圧比較回路にヒステリシス特性を持たせることにしました。 電圧比較回路の出力を抵抗器(Rf)を通してプラスの入力端子に接続します。 電圧比較器のマイナス入力がプラス入力の電圧より高くなると、出力は約0Vになります。これによりプラス入力電圧は下げられマイナス入力との差が広がります。マイナス入力電圧が多少下がっても出力は変化しません。 マイナス入力電圧が下がった場合も同様で、プラス入力より下がると出力電圧は上がります。するとRfによりプラス入力電圧はさらに上げられます。 すなわち、出力電圧が変化するための入力電圧に差ができます。これがヒステリシス特性です。 今回使用したスイッチング電源の出力特性はあまり良くありませんでした。リレーのON/OFFで12Vの電圧が変動してしまいます。温度検出に使用している電圧比較器ではmV単位の微小な電圧変化を検出しているので、電源電圧が変動すると正常な温度検出ができません。実際、設定温度付近でリレーがON/OFFを繰り返す現象が発生しました。原因を調べたら電源電圧が変動していることが分かりました。 対策として温度検出部の電源を3端子レギュレータを使用して9Vの安定した電圧にしました。これにより、リレーがバタつく現象は無くなりました。 温度検出部の電圧を9Vにすることによりサーミスタの抵抗値を電圧に変換するトランジスタの動作ポイントが変化します。ですから、サーミスタに直列に入れている抵抗器の値を調整し直す必要があります。 トランジスタの動作ポイントの調整は以下のように行いました。 1KΩの抵抗器をトランジスタのベースに接続し、抵抗器Rxを1KΩと電源の間に入れ、トランジスタのコレクタ電圧が約1VになるようにRxの値を調整します。 1KΩの抵抗器は約100℃でのサーミスタの抵抗値を擬似しています。 私の調整ではRxが12KΩで丁度良い値になりました。 サーミスタによる温度制御回路の詳細は「温度調整器」を見て下さい。 電力制御 今回使用したニクロム線は300Wのものを使用しました。これを最大電力で発熱させると相当な高温になります。温度制御器で設定温度に達したらニクロム線への電力供給を止めれば良いのですが、電力制御無しにON/OFFしたのでは温度の上昇、下降が急になり、安定した温度が得られないと思い、電力制御器を使用してON/OFFの電力を制御することにしました。ON用(温度上昇用)とOFF用(温度降下用)の2組の抵抗器を使用し、温度調整器のリレーで切り替える方法を採っています。 実際には発熱体(ニクロム線)の周りの部品(セラミックパイプ、アルミ角材)の蓄熱量により、急な温度変化はしないので今回のような電力制御はしなくても大丈夫と思います。少なくともOFF用は不要と思います。 少し、凝りすぎ。 トライアックはプリント板には実装せず、アルミのケースに取り付けて放熱しています。今回の使用では大きな電流は流しませんので、発熱は多くないと思いますが、念のためにそのようにしています。 電力制御の状態が分かるように二色のLEDを使用しています。赤は電力ON状態、緑は電力OFF状態を表示します。このランプはパイロットランプも兼ねています。 トライアックを使用した電力制御回路の詳細は「電力制御器」を見て下さい。 |