目次事例集ダンシング・ライト制御回路


ダンシング・ライト 制御回路
回路説明




信号入力回路


信号入力回路では以下の機能を持たせています。




入力信号レベルの調整

可変抵抗器(ケースに取り付け)により内部回路に取り込む信号のレベルを調整します。外部信号のレベルによりランプがきれいに点滅するように調整をします。




信号の増幅

トランジスタにより電圧増幅を行っています。入力信号の電圧が高い場合にはこの増幅器を設ける必要はありません。
今回使用した電流帰還バイアス方式のトランジスタ増幅器の詳細説明は「電流帰還バイアスタイプ・トランジスタ増幅器の回路設計」を参照して下さい。




入力信号を直流電圧に変換

入力交流電圧のレベルに従って変化する直流電圧を作ります。D2により交流電圧を半波整流して直流電圧にします。D1は整流する信号の基準電圧をダイオードの順方向電圧(約0.7V)分バイアスするために設けています。このダイオードが無いとD2による小電圧信号の整流動作がうまく働きません。
R4は入力信号のレベルが下がった場合に直流電圧を下げるための抵抗器です。入力信号の変化は激しいので、そのままではランプを駆動するためのリレーが正常に動作しないので、C3で直流電圧の変化をゆるめています。R4とC3の値を調整して点滅の状態を調整します。
    点滅が早すぎるC3の容量を大きくする
    点滅が遅すぎるC3の容量を小さくする
    高レベルのランプのみ点灯R4の値を小さくする
    低レベルのランプのみ点灯R4の値を大きくする

    R4とC3の調整は結構やっかいです。入力信号の電圧、信号の種類(声、音楽)などにより出力される直流電圧の変化は変わります。これらの値の設定にはあまり神経質にならない方が良いと思います。
    今回使用した値の場合、少し動作が速いです。




過電圧入力から内部回路を保護

信号増幅回路の出力は12Vp-pで変化します。ですから整流した信号は6Vp-pになることがあります。
今回の回路はTTL回路を使用しているために+5Vの電圧で動作させています。そのため、+5Vのツェナーダイオード(D3)を使用して+5V以上の電圧が電圧比較器に加わらないように保護しています。実測した範囲では+5Vを越えることはなかったので、過剰な回路かもしれません。

Vp-pとはピーク・ツウ・ピーク(peak to peak)電圧で交流電圧の最低電圧と最大電圧の電位差を言います。交流のAC100Vの場合、半サイクルの実効値が100Vということです。半サイクルのピーク電圧(最大電圧)はそのルート2倍(1.41倍)で141Vになります。もう半サイクルは逆の極性の電圧でこの最大値も141Vです。ですから、AC100Vのpeak to peak電圧は282Vp-pになります。




電圧比較回路


信号入力回路から出力される電圧を電圧比較回路を使用してレベル検出をします。
電圧比較器のマイナス入力に基準電圧(Vr)を加え、プラス入力に入力信号を変換した直流電圧(Vin)を加えます。入力信号がVr以上になると、電圧比較器の出力はHレベル(+5V)になり、Vr以下ではLレベル(0V)になります。Vrを調整することにより、電圧比較器の出力が変化する入力レベルを調整することができます。
今回の回路では4つの電圧比較器を使用して4レベルの入力レベルでランプを独立に制御できるようにしました。電圧比較器を増やせばもっと多くのレベルを設定することが可能です。

今回の回路ではそれぞれ独立した可変抵抗器で基準電圧を設定するようにしましたが、抵抗器を直列に接続して電圧を分圧し、基準電圧を作る方法でもかまいません。その方が等しい基準電圧を作ることができます。ただし、その場合には基準電圧を変えることはできませんので、電圧比較器を後から増やした場合、回路の組み替えが必要になります。


等しい値の5本の抵抗器を使用した場合の各基準電圧は以下のようになります。
R1〜R5=1KΩ
V1=5 x (R1)/(R1+R2+R3+R4+R5)=5 x 1/5=1V
V2=5 x (R1+R2)/5=2V
V3=5 x (R1+R2+R3)/5=3V
V4=5 x (R1+R2+R3+R4)/5=4V

LM319の場合、出力はオープンコレクタになっていますので、Hレベル出力時に+5Vが出るように抵抗器(R)を通して+5Vに接続しています。(「抵抗器で+5Vに吊る」とも言います) 抵抗器を入れないと出力がLレベルの時に電源を直にLM319で短絡することになり、LM319が壊れてしまいます。




出力制御回路

電圧比較器の出力の内、最大レベルを検出した出力のみを選択する回路です。4レベルの内、最大レベルのみを出力する回路です。
この回路は設けなくても良いかもしれません。その場合には最大レベルを含めてそれ以下のレベルのランプも点灯する動作をします。あなたの好みでどちらでもOKです。ただし、その場合でもNAND回路またはインバータ回路は必要です。高レベル検出回路のNAND出力と低レベル検出回路のNANDを接続している線を切断し、低レベル検出回路のNANDの入力を+5Vに接続すればOKです。

出力制御をしない場合の
回路


当初、動作イメージは上図のように考えていましたが、そうはなりませんでした。
1レベル、2レベルまでは想定通りの動作ですが、3レベル、4レベルは違います。
1レベル2レベル3レベル4レベル



すなわち、3レベルと4レベルでは2つの出力がONになります。

今回の装置ではランプが1つだけである必要はないので、このままの回路としています。





どうしても最大レベルのLEDのみを点灯させたい場合には下位レベルのNANDゲートを3入力および4入力にして制御する方法になります。多入力のNANDを使用すると部品の実装スペースが多く必要になるので、ダイオードを使用したANDゲート回路が便利です。
左の図はダイオードを使用した簡易ANDゲート回路です。
IN1とIN2の両方がHレベルの場合のみOUTはHレベルになります。
ただし、この回路は電圧の補正をしていませんので、何段も直列に接続することはできません。ダイオードの順方向電圧は約0.7Vですので、3段に接続するとOUTはLレベルでも約2Vになってしまいます。
入力数を増やすのは問題ありません。20入力ANDゲートでも100ANDゲートでも作れます。

今回の回路でダイオードによるANDゲートを使用して最上位レベルのLEDのみを点灯する回路を以下に示します。
1レベル2レベル3レベル4レベル




リレー駆動回路

リレーの動作を制御するために74LS07バッファICを使用しました。このICはオープンコレクタタイプのICでバッファ内部の出力用トランジスタのコレクタがオープン(内部で接続されていない)になっています。ですから、+5V以外の回路の制御も可能になります。制御可能な最大電圧は+30Vまでです。74LS07と同じ機能で74HC07がありますが、74HC07の場合、出力に流せる電流が4mAと少ないのでリレー制御にはむいていません。74LS07の場合には40mAまで流せます。
リレーと並列に接続しているダイオードはリレーのコイルの電流をON/OFFしたときに発生する高電圧からバッファICを保護するためのものです。

今回使用したリレーの接点電流容量はAC125Vで0.6Aです。ですから、外部に接続するランプは約40W以下にした方が無難です。
2つある接点を並列に接続していますが、各接点の動作するタイミングが若干ずれる可能性もあります。ずれた場合にはONまたはOFFする瞬間には結局1つの接点に負荷がかかるので、2倍の電流容量になると思わない方が良いです。今回の回路ではリレーの動作頻度が多いので2つの接点を並列にして寿命を延ばしています。



電源回路

今回の回路は+12Vの電源で動作するようにしました。そのため、IC用の+5Vは3端子レギュレータ(78L05)を使用して作っています。78L05は最大出力電流が100mAのICで今回の回路を動作させるためには十分な性能です。
今回使用したリレーの駆動電流は40mAですが、+12Vで直接駆動しているので78L05にはその電流は流れません。