目次電子回路工作素材集PLLシンセサイザ発振器(1)


PLLシンセサイザ発振器(1)の調整


 調整に必要なツール


 調整の手順
    調整準備
      ICソケットを使用している場合には、IC1からIC10をソケットから外しておきます。
        (配線に誤りがあった場合、ICが壊れてしまうので、安全のためです)
      配線が細かいのでハンダブリッジ(隣の端子または配線とハンダが接触してしまう)が無いかどうか十分に確認をします。
      コンデンサ、ダイオード、トランジスタなど極性がある部品は取り付けが正しいかを確認します。



    電源の確認
      電源を接続します。
      テスターを電圧測定モードにしてマイナスのリード線を接地に接続し、プラスのリード線で以下の電圧を測定します。(この後の電圧測定ではマイナスリードは全て接地に接続して行います)
      +5Vの電源電圧が出ない場合には回路がショートしていることが考えられますので、直ちに電源を切ります。

        +5Vの電源電圧
        IC1の24番ピン
        IC2の24番ピン
        IC3の14番ピン
        IC4の4番ピン
        IC5の5番ピン
        IC6の14番ピン
        IC7の4番ピン
        IC8の14番ピン
        IC9の14番ピン
        IC10の14番ピン

      電圧の確認が終了したら、電源を一度外して、IC1からIC10を搭載します。
      電源を入れたままICを着脱してはいけません。(ICが壊れてしまいます)
      IC1およびIC2はCMOSのICです。静電気に弱いのでコンピュータのボディなどに触って静電気を無くしてからICを装着します。極端に過敏になる必要はないのですが、いい加減に行うとICが壊れます。
      ICの装着が終わったら、再び電源を入れます。



    位相比較周波数の確認
      本当は初期化回路から確認を行うのが手順かもしれませんが、初期化回路の動作を細かく確認するのは大変なので、位相比較周波数から確認します。
      位相比較周波数が正しく出ていれば初期化回路は正常に動作しています。
      位相比較周波数はIC11(MB87014A)の13番pinに出力されています。
      私は直接IC11の13番pinに細い線を接続して周波数カウンターで周波数を計測しました。
      部品実装図のfrに0.5mm位の線を部品面側に立てると計測し易いと思います。
      後から気が付いたのでパターンを変更しました。
      位相比較周波数として2KHzが出ていればOKです。

      正常に動作しない場合
      2KHzが出ない場合は、初期化回路か水晶発振回路を確認する必要があります。

        水晶発振回路
        水晶発振回路は配線だけなので目視でハンダブリッジ、ハンダルーズ(ハンダがちゃんと付いていない)を確認します。IC11の2番pinに2MHzの周波数が出ていれば水晶発振器は動作しています。

        初期化回路
        初期化回路の確認は結構面倒です。初期化回路は電源投入時に一瞬(約20ミリ秒)動作するだけです。
        まず、ハンダブリッジ、ハンダルーズを目視で確認します。
        IC7を外します。IC7を外すことにより初期化回路は連続的に動作します。
        この状態でマルチバイブレータの動作を確認します。
        IC8の8番pinに周波数カウンターを接続します。約600Hzから1000Hz位の周波数が出ていればマルチバイブレータの動作はOKです。この回路はICの特性によって動作しないことがありますので、正常に発振しない場合にはICの種類を変えてみます。74LS00ではなくて7400とか。74HC00は使えません。
        マルチバイブレータの動作確認以外に思い当たるところはありません。後はICが壊れたとか。
        症状によって探索してみて下さい。



    位相比較周波数の調整
      VC1で位相比較周波数を調整します。
      水晶発振器ですので、周波数はほとんど変化しません。微調整です。



    出力周波数の確認
      L1の出力側(FETのゲートが接続されている方)に周波数カウンターを接続して周波数を確認します。119.3MHzが出ていればOKです。
      L1のコイルによりバリキャップのカソード側の電圧を約1V前後に調節します。
      あまり、変化はしませんので、周波数が安定していればOKです。

      正常に動作しない場合
      L1を調整しても周波数が安定しない場合はバリキャップが疑わしいです。

      1SV123
      今回使用したものは1SV123というバリキャップですが、1S2268でもOKです。
      ただ、1SV123も1S2268も製造中止のものなので、同等のものを探す必要があります。
      私は上記以外のバリキャップを使用していないので、どれが適しているのか分かりません。
      手持ちの1S48、1S553、1SV134で試してみましたが、いずれも正常に動作しませんでした。




    出力バッファの調整
      出力バッファの同調をL2で調整します。

      簡易型の高周波検出器を紹介します。テスターに接続して使用します。
      この検出器をPLL回路の出力端子に接続してテスターの電圧が一番高くなるようにL2を調節します。(約3V位の電圧が出ます)


      簡易高周波検出器




    以上で調整が終了しました。