目次事例集車で活用する電子/電気回路バッテリー充電器


バッテリー充電器 回路説明


整流回路
交流を直流に変換する整流回路にはダイオード・ブリッヂを使用した全波整流回路を使っています。入力の交流電圧がプラスとマイナスの交互に変化してもダイオード・ブリッヂにより、負荷に加わる電圧は常にプラスになります。
左の図で分かるように負荷に加わる電圧はマイナスにはなりませんが、プラスと0Vの間で変化しています。このような電圧を脈流電圧( Ripple voltage )と言います。
今回の回路ではこの脈流を小さくするために負荷と並列にコンデンサを接続しています。このコンデンサにより、ダイオード・ブリッヂから出る電圧が小さくなってもコンデンサに蓄えられた電気を負荷に流すことにより安定した直流電圧が負荷に加わるようになります。
AC100Vの入力をトランスでAC24Vに落としています。ただ、この24Vというのは交流電圧の実効値なので、直流電圧に変換するとそれの約1.4倍の30V位になります。


電圧制御回路
バッテリーが過充電にならないように上限の充電電圧を制御する回路です。
制御回路には出力電圧を変えることができる可変型3端子レギュレータ (LM317)を使用しています。
左の図はレギュレータの基本回路です。VoutとADJ間の電圧は一定で標準で1.25Vです。
出力電圧の制御はR2の値を変えて行います。
出力電圧(Vout)は以下の式で計算できます。
Vout = 1.25 ( 1 + R2/R1) + IADJ(R2)
IADJ はAdjピンから流れる電流で数十μAですので、右端の項は無視しても良いです。
LM3xxでは電圧制御用の抵抗値を決めるのに制約があります。それは出力電流が10mA以上でないと電圧の制御が正常に動作しないという制約です。常に10mA以上電流が流れる負荷がある回路で使用する場合にはこの制約は関係ありませんが、実験用電源などのように無負荷の状態がある場合には考慮する必要があります。どのような考慮かと言うとR1の値を120Ω位にするということです。こうすると出力電流は最低でも10mAは流れることになります。


今回の回路ではR1を100Ωにしました。また、上の説明でのR2は回路図のVR1+R2になります。
実際の回路ではR2を560Ω、VR1を2kΩにしています。

VR1が0Ωのときの出力電圧は以下のようになります。
Vout = 1.25 ( 1 + 560/100 ) = 1.25 x 6.6 = 8.25V
VR1が2kΩのときの出力電圧は以下のようになります。
Vout = 1.25 ( 1 + 2,560/100 ) = 1.25 x 25.6 = 32V
ですから、この回路の出力電圧はVR1のより約8Vから32Vまで制御することができます。
充電器からの出力電圧はこの回路のあとに電流制御回路が入るので、この値から2〜3V低下します。


電流制御回路
7805は電圧レギュレータで出力電圧を一定にするためのIC回路です。今回はこのICを使って電流を一定にする回路にしています。
左の図は今回の回路を少し変形して定電圧回路としての構成にしています。7805は入力電圧が変動しても接地端子(G)と出力端子(O)の間の電圧が5Vになるように動作します。O-G間に抵抗器R3を接続するとR3に流れる電流は I = 5V/R3 になります。ですから、R3に流れる電流は一定になります。
R3に流れる電流は負荷に流れる電流ですので、R3の値が変わらなければ負荷に流れる電流も一定になります。逆にR3を変えれば、負荷に流れる電流を変えることができます。

この図は今回使用している回路です。
まず、R3の値を決めます。今回の充電器では最大電流を 500mA としているのでR3としては 5V/0.5A = 10Ωにしています。10Ωの抵抗器に 500mA の電流が流れると、抵抗器での消費電力は I2xR = 0.52A x 10Ω =2.5W になります。ということで、今回は 5W のセメント抵抗器を使用しています。
次にVR2の値です。最低 80mA くらいまで制御すると想定しました。ですから、R3+VR2 が 5V/0.08A = 62.5Ωになります。R3が10ΩにしましたからVR2の値としては50Ωにしました。50Ωに 80mA の電流が流れると抵抗器の消費電力は 0.082 x 50 = 0.32W 。今回は安全をみて 2W の可変抵抗器を使用しました。

定電流回路に使用しているICは電圧レギュレータなので、電圧制御回路で使用しているLM317を使用することも可能です。ただし、LM317の場合、O-G間の電圧が1.25Vと低い値になっています。この場合、500mA の電流値にするための抵抗値は 1.25V/0.5A = 2.5Ω、80mA にするのには15.6Ωと小さな値で制御することになります。抵抗値の誤差を考えると制御しづらくなります。
逆に出力電圧が大きいレギュレータを使うと制御用の抵抗器の消費電力が大きくなります。例えば12Vのレギュレータを使用した場合、500mAの電流にするための抵抗値は 12V/0.5A = 24Ω、抵抗器で消費される電力は 6W になります。ということで、電流制御用には7805を使用しています。

R4とC3は無くてもかまわないと思います。今回の回路では充電器の出力回路にバッテリーからの逆電流を防止するためにダイオードを入れています。ダイオードはON状態(電流が流れる状態)とOFF状態(電流が流れない状態)がはっきりしているので、バッテリーの電圧が充電により上昇して充電器からの電圧より高くなると充電器からは電流が流れなくなります。するとバッテリーの電圧が下がって、また、充電器から電流が流れ始める、ということが短時間に起きると発振のような現象になるかもしれないと考えました。そこで、充電器の急激な電圧変化を抑えるためにC3を入れました。R4は無負荷状態で充電器の入力を切った場合、C3にたまっている電気を放電させるためです。ただ、実際にはバッテリーの電圧はそんなに急には変化しないので、C3とR4は付けなくても問題はないと思います。

出力回路

充電器の出力回路には電圧計、電流計、逆電流防止ダイオードを付けています。
電圧計にも多少の電流が流れるので、電流計より内側に接続します。
逆電流防止ダイオードは充電器をバッテリーに接続した状態でAC100Vが切れたときにバッテリーから充電器へ電流が逆流することを防ぐためのものです。