素人の場合、ケースの加工をする際の道具はあまりないので、結構、苦労するものです。
ストッパーが付いている部品などの複雑な形状の穴を開ける。 金属板を曲げる。(厚板を曲げるのはほとんど無理) 異なる大きさの穴をたくさん開ける 以下、今回の電源装置を作成(ケースへの組み込み)した過程を紹介します。 私の手持ちの道具を前提にしているので、ほかにも良い方法があると思います。 参考になればうれしいです。 穴開け まずは部品類を取り付ける穴をケースに開けます。 作業前準備
バリ(ドリルで穴を開けたとき、穴の縁にできる尖った切り屑)等で怪我をしにくい。 手の油で装置が汚れない。 ヤスリで手に豆が出来にくい。 保護シート
フロントパネルの穴開け フロントパネル・シート フロントパネルの穴の位置決めにはフロントパネル・シート(プリンタで紙に印刷したもの)を使用しました。 部品の輪郭を示す赤い線を削除したシートを印刷し、フロントパネルにテープで固定します。 このシートは最終的に使用するシートのデザインと同じですが、まずは穴開けに使用します。 穴を開けてしまうので、最終的に使用するシートは後から再度印刷します。 センターポンチ 穴を開ける位置に印を付けます。単なる板の場合にはポンチで印を付けますが、今回のようにすでに出来上がっているケースの場合、ポンチを使うとパネルが曲がってしまうことがあります。 私は先端の尖ったキリ(木工用のキリ)で印を付けています。ドリルの先端が穴を開ける位置に固定されればよいので、それほど深い穴を開ける必要はありません。 3mm位の穴から徐々に太いドリルに変えて、大きい穴にしたほうがきれいに開けることができます。6mm位より大きな穴はリーマを使用して大きくします。穴が目的のサイズに近づいたら、部品を取り付けてみて穴の大きさを確認しながら大きくします。 メータ用の穴 メータの穴は直径38mmですので、糸鋸を使用して開けます。フロントパネル・シートは穴を開けると切れてしまうので、コンパスを使用してフロントパネルに直接38mmの円を書きます。この円の少し内側に3mm位の穴を開け、そこに糸鋸の刃を通し、円に沿って切ります。 開けた後の穴は丸ヤスリでバリを取り、形を整えます。当然、実際のメータを取り付けて穴の大きさをヤスリで調整します。 LED用の穴 今回使用したLEDの取り付け穴は特殊な形をしています。基本的には丸穴なのですが、ストッパーが飛び出しています。この部分の穴は小さな平ヤスリと丸ヤスリで不要な部分を削ります。 フロントパネル・アクリル板の穴開け フロントパネルに必要な穴を開けた後、フロントパネル・シートを固定するためのアクリル板の穴開けをします。アクリル板をフロントパネルに重ねて、穴に沿って切り取り線を描きます。私の使用したアクリル板は紙のシートが張ってあったので、鉛筆で線を描きました。その後、線に沿って穴を開けます。アクリル板には厚さ0.5mmのものを使用したので、カッターナイフではうまく切れません。私は彫刻刀で上から押さえつけるように刻みを入れ、切り取りました。 フロントパネル・シートの穴開け 最終的に使用するシートを印刷します。部品の穴に沿ってカッターナイフで穴を開けます。実際のフロントパネルの穴は予定していた位置と多少違うと思います。大きくずれていなければ、気にする必要はありません。シートは紙なので部品にぶつかる部分は折れ曲がり、穴に合っていない隙間部分は部品に隠れてしまいます。 リアパネルの穴開け リアパネルにはACコード、フューズ、ACコンセントを取り付けます。 リアパネルはフロントパネルのようなシートは使っていません。ですから、穴開けの位置は直にパネルに印を付けます。ケガキなど先の尖ったもので保護シートに穴開け位置を描きます。 私は今回の加工でACコンセントの寸法を間違えてしまい、大きな穴を開けてしまいました。小さければさらに削れば良いのですが、大きな穴を開けてしまった場合には工夫が必要です。 今回の場合は別の板でカバーすることにしました。0.5mmの真鍮の板にACコンセントに合う穴を開け、それをリアパネルに取り付けました。 真鍮の板である必要はなく、アルミ板でOKです。アルミの方が加工し易いのでお勧めです。 フロント、リアパネルの補強 今回使用したケースではフロントパネル、リアパネル、底板を一枚のアルミ板で構成しています。 フロントパネル、リアパネルの上部には支えがありません。ケースの蓋を取り付ければパネルの上部に力は掛かりにくいので、問題ないとは思います。 私はL型のアルミ棒で補強しました。底板との固定部分の穴は長円形にして固定部分をスライド出来るようにしておきます。ケースの蓋をしたときにパネルと蓋とがぶつからないようにパネルの角度を調整します。 フロントパネルとの接続には皿ネジを使用しました。皿ネジを使うことにより、このネジは最終的にフロントパネル・シートの下に隠れて見えなくなります。 内装品 トランス、レギュレータの位置をまず決めます。 トランスは重量があり、なるべくケースの中央に取り付けます。今回の場合、レギュレータの位置の関係で、若干、後ろ側に取り付けました。フロントパネルにメータ類があるので、この場所でも重心はケースのほぼ中央になり、ハンドルで持ち運んでも違和感は感じません。仮にトランス類を取り付け予定場所に置いて、ケースの蓋を閉じ、ハンドルで持ってみました。 底板にはトランス、レギュレータ以外に整流器、ラグ端子を取り付けます。整流器は熱が出るので、直接ケースに取り付けて放熱します。いずれも小さい部品ですので、部品同士がぶつからず、後から配線などができる場所に取り付けます。 空気穴 ケースの横にはスリットがあります。今回の装置では、レギュレータ、トランスなどから熱が出るので、底板にもベンチレーション用の穴を開けています。 部品の搭載 全体のバランスを確認するために全ての部品を所定の位置に取り付けてみます。 リアパネル名称印字 リアパネルにもシートを使うこともできますが、文字数が少ないのでレタリングシートを使うことにしました。シールの固定にはスプレー式のレタリング固定剤を使う方法もありますが、今回はPLUS社が販売している粘着フィルムシールを使いました。シールを貼るためには部品を外す必要があるので、配線する前に行います。シールを貼るときには中に空気が入らないように端から慎重に貼ります。私はリアパネル全体に貼りましたが、文字の部分のみでもOKです。貼る面積が広いと空気は入り易いので結構苦労します。 配線 配線の色は好みですが、プラス電圧側の配線には赤系の色、マイナス電圧側の配線には黒、白または青系の色を使うのが一般的です。 信号線などには黄色、白などが使われます。電気回路などでは接地線として緑が使われます。線材の使用色の規定はあると思いますが、個人使用の場合にはこだわる必要はありません。自分が間違えなければ良いのです。 今回はプラス線に赤色、マイナス線に白色、接地線に黒色を使用しました。 配線の取り付け部に端子カバーを付ける場合には配線する前にカバーを線材に通しておきます。 フロントパネル側の配線 フロントパネルの部品への配線を行う場合、トランス、レギュレータは邪魔なので、一時取り外します。 フロントパネル部品に付けた線材は余長と取って切ります。余長は後でレギュレータを外した時にプリント板の点検ができるような配線の長さにしておきます。そのためにはこの段階から、配線の通す場所を決めておく必要があります。 電圧調整用の可変抵抗器の配線 この配線に流れる電流は少ないので、細い線材でOKです。 電圧計の配線 この配線にも流れる電流は少ないので、細い線材でOKです。今回は出力端子に付ける圧着端子の関係で太めの線材を使用しました。 出力の配線 この配線には5A位の電流が流れるので、太めの配線を使用します。電流計はプラス出力回路に入れていますので、赤色の配線を使います。電流計にはプラス端子(電流が流れ込む側)とマイナス端子(電流が流れ出る側)があり、逆に接続すると電流計が壊れてしまいます。配線の色を同じにした場合、プラスとマイナスを間違えないように注意する必要があります。 電流計、出力端子への配線取り付けには圧着端子を使っています。出力端子の部分は狭いので、圧着端子を使用した方が取り付けが楽です。圧着端子の接続には圧着工具を使用します。 接地線はケースに接地します。パイロットランプ用外付け抵抗器の中継ラグ端子の接地端子を使用しました。 パイロットランプの配線 16mA位の電流しか流れないので、細い線材でOKです。 LEDにはプラス端子とマイナス端子があるので、間違えないようにします。 電源スイッチの配線 電圧が高いので、出力配線ほど太い必要はないですが、若干太めの線材を使用しました。 リアパネル側の配線 リアパネルの部品への配線もトランス、レギュレータは外した状態で行います。 AC100Vの配線 AC100Vの入力配線、フューズ、ACコンセントの配線を行います。 トランスへの配線も余長を取って取り付けておきます。 内装取り付け部品の配線 最後にトランス、レギュレータ、整流器の配線です。
トランスを固定する前に整流器の配線を行います。
トランスを所定の位置に固定する前に一次側の配線を先に行っておきます。一次側の端子は下側にあるのでトランスを固定してしまうと配線がしにくくなります。 二次側の配線はトランスを固定した後に行います。これは配線の取り回しを行うのにはトランスを固定した方が確認し易いからです。
レギュレータには入力配線、出力配線、電圧制御配線を行います。 レギュレータを固定した状態の配線ルートと、レギュレータを取り外した状態の配線長を確認します。配線はレギュレータを外せる範囲でなるべく短くします。片方向から配線をした方がきれいに配線できます。
最初の設計では取り付ける予定はなかったのですが、性能を測定するために取り付けることにしました。5Wのセメント抵抗器を使用しました。
これも最初の設計ではなかったのですが、無負荷時の電圧調整を容易にするために付けました。 電圧計の端子に接続しています。5Wのセメント抵抗器です。 小型ファンの取り付け これは当初は想定していませんでした。温度測定の結果、最大出力時のレギュレータ表面温度が許容温度(80℃)を越えてしまうことが分かったので、後から取り付けました。ファンは装置の背面に取り付けることにしました。大きな穴を開けなければならないので、最初から計画できればその方が楽です。穴を開けるためにトランスとレギュレータを一度取り外しました。切り屑が部品の隙間に入らないように注意する必要があるので、結構大変でした。 ファンの電源はトランスの一次側に並列接続します。 レギュレータの熱を効率よく外に出すためにケースの蓋に開いている穴を紙で塞ぎ、レギュレータの下部に開けた穴からのみ外気が入るようにしました。 以上で全ての配線が終了しました。 電源を入れる前に、間違いが無いかどうかを十分に確認します。 |