目次電子回路工作入門工作道具の基礎知識




電子回路は電子部品を基板と呼ぶ板に取り付け、部品間に必要な配線を行って作ります。
私は手軽に回路を組み立てるのにはユニバーサル基板を使いますが、ここでは本格的なプリント板を作るための道具について説明します。高周波回路(無線機とか)を作るときには配線の長さ、配線の通し方なども考慮する必要がありますので、本格的なプリント板を作る必要があります。

プリント板はエポキシ樹脂、ベークライトなどの絶縁板に銅箔が張り付けてあります。
この銅箔が配線部分になるわけですが、プリント配線を行う前の基板は絶縁板の全面(片面全面または両面(裏、表)全面)に銅箔が張られています。(プリント原板)
プリント配線板を作るということは、この銅箔の必要なところを残して不要なところ(絶縁するところ)を無くす(溶かす)ということです。
プリント板の作り方にはいくつかの方法がありますが、ここでは市販されているプリント板作成用具を使った方法を説明します。
基本的には銅箔を塩化第二鉄の溶液で溶かすわけですが、溶けては困る部分(配線として残す部分)を溶けないようにマスクする必要があります。マスクをする方法としてはプリント原板に直接、油性マジックインクなどで配線として残したい部分を塗る方法でもかまいません。(マジックの種類によっては溶剤に溶けてしまうものもありますので試しを行った方が良いです) 1枚だけ作るにはこの方法でもかまいません。

今回紹介するものはプリント原板としてポジ感光基板を使う方法です。これはプリント原板の上に感光剤が塗ってあり、透明または半透明のフィルムに書いたプリント版下を重ねて紫外線に当てると光に当たった部分の感光剤が変質し、感光剤の現像液に溶け、当たらない部分は溶けないという仕掛けになっています。プリント版下としては銅箔を残したい部分が黒色で書かれ、溶かしたい部分は透明または半透明である必要があります。(ポジ版下)
感光剤が残った部分は塩化第二鉄でも溶けずプリント原板の配線とする部分の銅箔が残せるわけです。
プリント原板の銅箔を溶かすことをエッチングといいます。

具体的なプリント基板の作り方は「オリジナル・プリント基板の製作」を見て下さい。

以下、プリント板製作で使用する道具を紹介します。



 プリント基板(ポジ感光基板)

写真左はポジ感光基板で遮光の袋に入っています。日光に当たると感光剤が変質してしまいます。でも、写真の感光紙のようにちょっとでも光に当たったらダメというわけではなく、あまり神経質に取り扱う必要はないのですが、ほっておいてはダメです。
基板の大きさは何種類かありますので、作るものの大きさに近い物を使います。または、大きめのものを切って使ってもかまいませんが、光にあまり当たらないようにして切る必要があるので、ちょっと大変です。サイズは 150mm×100mm 〜 300mm×200mm 位まであります。基板の種類も紙エポキシ、ガラスエポキシなどがあります。
紙エポキシの方が安価ですが、耐久性などが多少悪いようです。実用上は問題はないと思います。

写真中下は感光剤の現像剤です。水に溶かして現像液にして使います。水の分量は袋に記載してあります。

写真右のピンク色のものはプリント版下を書くための透明なフィルムです。このフィルム上にレタリングテープとかマジックインクなどでパターンを書きます。
私は版下の作成にはパソコンでグラヒックパターンを描き、プリンタで印刷をしたものを使っています。



 紫外線露光器



感光プリント原板にプリントパターンを焼き付けるときに紫外線を使用します。
この装置は蛍光灯から出る紫外線を利用して焼き付けるものです。
焼き付けは約20分位かかるので、タイマー回路を内蔵しています。
私自身が作成したものです。
詳細は「紫外線露光器」を見て下さい。



 レジスト・ペン




マスクパターンの補修に使用する油性のマジックインクです。
マジックインクの種類によってはエッチング液に溶けてしまうものもありますので、専用のもの以外を使用するときには試験をしてみる方が良いです。
このペンで、直接マスクパターンを描くこともできます。




 クランプ



感光プリント原板にプリントパターンを焼き付ける(露光する)ときに原板と版下を密着して固定するための道具です。
黒く見える部分はスポンジでできています。その上に原板と版下を重ねて置き、上からガラスで押さえて固定します。




 噴流式エッチング装置


プリントパターンが描かれたプリント原板の不要な銅箔を溶かすための道具です。
このような道具を使わなくてもパレットなどにエッチング液を入れて、溶かしてもかまいません。うまく溶かすのにはプリント板を少しゆらしながら新しいエッチング液がプリント板に触れるようにするのがコツです。

この道具はエッチング液の撹拌、液の温度調節などを自動的にやってくれるものです。
左に見えるのはエアーポンプで、熱帯魚の水槽などに空気を送るものと同じです。これをビニールパイプで液層(中央)につなぎ空気を送り込むと、液層の下の方から空気が吹き出し、液を撹拌します。
液層の右側にはヒータを取り付けるようになっており、サーモスタットで液の温度が一定になるようにコントロールします。
液温は40℃〜43℃が適温で、45℃以上には絶対にしてはいけないそうです。液が変質するのか、プリント板がダメになってしまうのか分かりませんが。
液層の左側には棒状の温度計を取り付けます。これで液の温度を監視します。
液層のふた(白い部分)には小さな穴が開いていてり、チタン線を使ってプリント板を吊せるようになっています。

液温を調整した後、エッチングしたいプリント板を上から吊すわけです。
時々液から引き上げて、溶け具合を確認しなからエッチングします。




 石英管ヒーター





エッチング液の温度コントロールをします。上部に温度調整用のつまみが付いており、回すと設定温度を変えることができます。
また、ガラス管の中には小さなネオン電球があり、通電中(温度上昇中)はオレンジ色に点灯します。設定温度になると消えて設定温度になったことが分かります。








 エッチング液

塩化第二鉄(FeCl3・H2O)の溶液です。
塩化第二鉄液は、法規で規制された毒物、劇物、危険物ではありませんが、エッチングによってプリント基板の銅が溶け込んだ液は、廃液規制対象となります。たとえ少量でも下水道に流したり、土中に埋めてはいけません。必ずエッチング液に添付されている処理剤を使用するか、専門の廃液処理場で処理しなければなりません。
また、液が衣服に付くと絶対に取れません。変色、変質してしまいますので、取り扱いには十分に注意をして下さい。(経験談)
皮膚に付いても洗い流せば良いのですが、目などには絶対に入らないように。もし入ったらすぐに水で十分に洗い流す必要があります。



 レジスト希釈液




エッチングの終了したプリント基板のマスクパターンを除去するために使用します。
クレンザーと金属たわしでこすり取ってもかまいませんが、この液を使用した方が楽に除去することができます。




 電池式ミニドリル



出来上がったプリント基板に部品を取り付けるための穴を開けるためのミニドリルです。
別にこのようなドリルでなくてもかまわないのですが、開ける穴が0.6mm位ですので、このようなものがあった方が便利です。







 フラックス


エッチングしたプリント板は感光剤を取るために、レジスト希釈液を使用します。感光剤を除去した後の銅箔はきれいになりますが、むき出しの状態になっていますので、すぐに酸化が始まります。しばらくすると変色して黒っぽくなってしまいます。その酸化を防ぐためにプリント板用のフラックスを薄く塗る必要があります。こうすると銅箔をいつまでもきれいな状態にしておくことができますし、ハンダも付き易くなります。




 ソルダレジスト(通常は使いません)


電子機器などに使われているプリント板を見ると、配線面(ハンダ付けをする面)が緑色をしています。
これはソルダレジストというものを塗っているからです。ソルダレジストとは名前が示すように半田(英語でソルダ)が付くのをさえぎる(レジスト)ということで、ハンダを付ける必要がある部分(部品のリード線とプリント配線をハンダで付ける部分)以外の銅箔にはハンダが付かないようにするために塗布するものです。色は緑色をしています。工業用などでは機械(ハンダ漕)でハンダを付けますので、無駄なハンダを使わなくて済むようにソルダレジストでガードしているわけです。手作業でハンダ付けをする場合には必要はありません。