入力アンプ 入力アンプにはLM747を使用しました。 電源として±12Vを使用しています。そのため、アンプの入力電圧の最大値は±12Vまでです。入力電圧の許容値はそれ以上としたいので、R1とR2により1/10に分圧しています。±30Vが入力された場合、アンプの入力端子には±3Vが加わることになります。 垂直位置調整は出力に直流を重畳させています。(±5V) LM747にはオフセット調節用端子があるので、これを使用するつもりでしたが、電圧変動範囲が小さいので、位置調整には使えませんでした。もともと位置調整用の端子ではありません。 今回の方法は強引な方法で、位置を調整すると、出力電圧も変化してしまいます。あまり上または下にしなければ使用可能です。 VR1により信号の垂直位置(電圧軸)を調整することができます。ただし、使用するオシロスコープが直流表示できることが条件です。 オフセット端子が使えませんでしたので、入力アンプとしては1パッケージに4つのオペアンプが入ってるTL084を使用することもできます。ピン配置は違いますのでパターンは作り直す必要があります。 VR2によりアンプの増幅率を調整しています。VR2が最小(アンプの出力とマイナス入力端子を短絡した状態)の場合、アンプの増幅率は1になります。(正相増幅) 作成した回路ではR3=10KΩ、VR2=250KΩとしましたので、VR2を最大にした場合(1+VR2/R3)=26倍になります。入力の抵抗分割により入力が1/10に、R4とR5で1/2になってしまいますので、これを補正する値としています。±12V以上にはなりません。(頭がカットされます) R4とR5は出力の分圧用です。これは、この後に接続するスイッチング用ICが±5Vで動作するため、入力アンプの出力をそのまま接続すると壊れてしまうからです。R4=15KΩ、R5=10KΩとしましたので、10/(15+10)=1/2.5になります。 ±12Vが入力アンプから出力された場合、R5に出る電圧は±4.8Vになります。 今回行った方法(入力を1/10にして、必要に応じて増幅する方法)はノイズ(雑音)が発生し易くあまり良い方法ではありません。入力信号を1/10に下げると、ノイズレベルに近づき増幅器ではノイズを含め増幅してしまうからです。 チャネル切替 4つの入力信号の切替を行う回路です。ICとしてはアナログ信号のスイッチング用のものを使用しています。このICの電源電圧は±5Vを使用していますので信号として±5Vの範囲の信号を扱えます。本当はもっと高い電圧を扱えると良いのですが、しかたありません。でも、この範囲でも十分に使用可能です。 切替制御線の状態に従って、CH1〜CH4の入力信号が出力に現れます。 左の図では入力信号の周波数に対して切り替え周波数があまり速くない状態ですので、出力信号(赤)が点線になっていますが、実際には入力信号が切り替え周波数より十分低ければ、点線には見えず、連続した線として見えます。 切替動作を制御するのにTTL(0V 〜 +5V)の電圧を使用します。 2本の制御線と信号の切替の関係は以下のようになります。
表から分かるように制御線BをL状態にして制御線AをLまたはHにすると、0Yと1Yだけを出力に接続することができます。 4現象まで必要ない場合にはそのようにします。このようにすると2現象の映像は4現象時に比べ倍の密度で表示されます。 2現象/4現象切替 方形波発振器で発振させたパルスを使ってアナログ・スイッチを切り替えます。 4現象の場合には発振器の出力をフリップ・フロップ(FF)に入力し、2倍の周期にします。FFの出力はアナログ・スイッチの入力Bに接続します。入力Aには発振器の出力を直接接続します。これによりアナログ・スイッチの制御線A、Bには別表で示したようにパルスが変化します。 2現象にするためにはFFの出力を抑え、アナログ・スイッチの制御線BをLレベルにします。これにより制御線AのみがLとHに変化することになります。すなわち、アナログ・スイッチの入力CH1とCH2のみが出力にでます。 制御線BをLレベルに固定するために2入力NANDゲートを2つ使用します。 n3とn4は波形の整形用です。
NANDゲートは入力のどれか1つがLレベルになると、他の入力の状態に関係なくHレベルが出力されます。他の入力の変化は出力に現れません。 n1の出力(H)はn2で位相反転し、n2の出力はLレベルになり、アナログ・スイッチの制御線BはLレベルに固定されます。 このように、アナログ・スイッチの制御線はAのみがLとHに変化し、CH1およびCH2のみが出力されることになります。 発振器 オペアンプを正帰還させた方形波発振器を使用しています。 D2およびD3は4.7Vのツェナーダイオード(低電圧ダイオード)です。 発振器の出力電圧を約±5Vに制御するためのものです。 また、D1は出力がプラス電圧のみになるように整流するためのダイオードです。発振器の出力をTTL(0V 〜 +5V)に合わせるためです。 R24はオペアンプの出力によりD2およびD3に電流が流れすぎないように制御するために入れています。 発振器の周波数は直接アナログ・スイッチの切替周期になりますので、できるだけ高い周波数が望ましいのですが、以下のような問題点があります。 ・オペアンプでは高周波の発振が難しい。 ・切替周期を速くしても、オシロスコープが高周波に対応していないときれいな信号波形が見えない。 以上のことにより、今回の発振周波数は約20KHzにしています。 波形をきれいにするために周波数特性の良いオペアンプを使う必要があります。 通常のオペアンプ(LM318)と今回使用したLM6361の信号の立ち上がり時間を比べると以下のようになります。
トリガ信号アンプ CH1の信号をオシロスコープの外部トリガ信号として使用します。 オシロスコープの動作原理でも説明しているように観測波形を画面上で静止させるためには走査の周期を入力信号の周期と合わせる必要があります。 オシロスコープは観測信号の立ち上がりまたは立ち下がりを内部で検出し、走査周期を自動的に合わせる機能を持っていますが、これを使うと、スイッチングによる立ち上がりまたは立ち下がりを検出してしまい、入力信号のものとは違う周期で走査してしまいます。ですから、入力信号を外部トリガとして入力する必要があります。 CH1の信号を増幅率1のアンプを通して外部トリガ信号として使います。 電源 オペアンプの動作用として±12Vの電源が必要です。また、アナログ・スイッチの電源として±5V、論理回路の電源として+5Vを使います。 まず、AC100Vから±12Vの電圧を作り、その電圧を3端子レギュレータにより±5Vの安定した電圧にします。 今回の回路では大きな電流容量は必要ないので、小型のスイッチング電源および3端子レギュレータを使用しました。 |