分カウンター回路 カウンターには74HC192(Presettable Synchronous Up/Down BCD Counter)を使用しています。 減算ができるカウンターはこれ以外にも74HC190などもありますが、秒カウンターでクリア端子を使用したかったのでこのカウンターを使用しました。クリア信号は不要かもしれません。 秒カウンターからのパルス信号(1分に1回)をDW(Count Down)に入力します。カウンターはその信号の立ち上がりでカウントダウンを行います。 カウンターが0になるとBR(Borrow:借りる)の出力がL(ローレベル:0V)になります。次に9になるとH(ハイレベル:+5V)に変化します。これにより上位のカウンターを一つカウントダウンします。 LD(Load)端子がL状態のとき、BCD−SWによりカウンターの初期値を設定することができます。この状態のとき、BCD−SWの設定値と同じ値が表示部にも伝わるので、表示部で設定値を確認することができます。今回はサムホイール・スイッチを使用しましたので、わざわざ表示で確認しなくても分かります。 LDがH状態でないとカウントアップ/カウントダウンは行われません。LDの状態はタイマーの動作を制御している制御回路でコントロールされます。 BCD(Binary Coded Decimal)カウンターは0から9までを扱うカウンターです。BCDカウンター以外にバイナリーカウンター(Binary Counter)があります。バイナリカウンターは0から15までを扱うカウンタで、16進(Hex:ヘキサ)カウンターとも言います。 秒カウンター回路 秒カウンターとして74HC192を使用しています。 秒カウンター回路でのポイントは00秒の次が99秒でなく、59秒にする点です。 回路は簡単です。 秒表示の10位が9になるとNANDゲートの出力がLレベルなります。この出力をLD(Load)に入力します。LDがLレベルになるとプリセットの入力がカウンターに設定されます。今回の回路ではプリセットとして「5」を設定しています。「5」がカウンターに設定されるとカウンターの出力も「5」になります。それによりNANDゲートの出力はHレベルになりますが、既にカウンターには「5」が設定されましたので、関係ありません。 以後、5からカウントダウンが行われます。 一瞬、カウンターの出力は「9」になりますが、すぐに「5」に設定されます。目では見えません。 カウントアウト検出回路 カウンターのBR端子にはカウント値が0になるとLレベルが出力されます。 各々のカウンターのBRをインバータで信号反転し、NANDゲートに入力します。全てのカウンターのBR端子がLレベルになったときだけ、NANDゲートの出力がLレベルになります。 スタート・ストップ制御回路 タイマーの動作を制御(スタート/ストップ)する回路としてNANDゲートを使用したSRタイプフリップ・フロップ(FF)を使用しました。 N1がストップ用、N2がスタート用です。 SRタイプFFの動作については「Dタイプ フリップ・フロップの動作」を見て下さい。 スタート時の動作 分カウンターの設定値が00でないときはタイムアウト信号がHになっています。このときにスタートスイッチが押されると、I1の出力がHになり、N3の出力がLになります。N3の出力がLになるとN2の出力がHになります。 電源ONリセット信号は電源投入直後はLになりますが、その後はHになっています。タイムアウト信号もHですので、N1の入力は全てHになり、N1の出力はLになります。N1の出力は秒カウンターのクリア端子に接続していて、Lになるとクリア状態が解除されます。 スタートスイッチがOFFになるとN3の出力がHになります。しかし、N1の出力がN2の入力に接続されているので、N2の出力はH状態のままです。(タイマー動作中状態) タイムアウト時の動作 タイマーがカウントダウンを行い、00分00秒になるとタイムアウト信号がLになります。これによりN1の出力はHになります。N3の出力はHですので、N2の出力はLになります。 スタート・ストップ制御回路の出力(N2の出力)は分カウンターのLD(Load)端子に接続されていて、この出力がLになると分カウンターにはBCDスイッチの設定値がセットされます。ですから、タイムアウト信号はすぐにLからHに変化します。N2の出力(L)はN1の入力に接続されています。タイムアウト信号がHに変わってもN1出力はHのままです。N1の出力がHになると秒カウンターがリセットされます。 スタートスイッチが押されていないとI1の出力はLなので、N3の出力はHになっていてN2の出力はLのままになります。(タイマー停止状態) タイマースタートのガード 分カウンターの設定が00分の場合、タイムアウト信号はLになります。この状態でスタートスイッチが押されるとI1の出力はHになりますが、タイムアウト信号がLなのでN3の出力はHであり、N1およびN2の状態は変化しません。タイマー停止状態のままです。 スタートスイッチ回路 スタートスイッチ回路は微妙な電圧で動作します。プルアップ抵抗は小さい方がノイズの影響を受けにくくなります。(極端に小さくしてはいけません。数百Ω以上) スイッチまでの線が長い場合にはシールド線を使用した方が良いです。 スタート・ストップ制御回路では以下のような制御を行っています。
1秒クロック発振器 NE555を使用した発振器です。 周波数は以下の式で計算出来ます。(誤差は出ます) 実測では VR1+R4 = 5.7kΩ でほぼ1Hzになりました。 部品の誤差もありますが、1kΩの可変抵抗器で1Hzの発振周波数に調整できます。 NE555による発振器の詳細は「555発振器」を見て下さい。 クロックゲート回路 クロック発振器で作られた1秒のパルスをカウンターのカウントダウン端子(DW)に入力し、カウントダウンを行います。 0分0秒になったときにカウントダウンを停止しさせます。カウントダウンの停止はN3の入力をLレベルにすることにより行います。カウンターを停止させるときカウントダウン端子をLレベル状態で停止させます。H状態で停止すると各カウンターのBR端子がL状態でなくなるため、0分の設定時にカウンタースタートを抑止することができません。 最初に作成した回路ではこのことを考慮していませんでした。 表示LEDドライブ回路 7セグメントLEDにはアノードコモンタイプを使用します。 LEDの発光輝度はLEDの種類によって違います。 今回のように種類の違うLEDを並べて使用する場合には、抵抗器の値を変えて輝度を調整します。 LEDの種類により最大電流が違いますが、一つのセグメントの電流は10mA以下になるように調整するのが無難です。 DP(Dot Point)を点灯させる場合も同様に抵抗器で電流を調整します。 LEDドライバとしては74LS247を使用しました。 BCD入力とLEDセグメントの関係は「デジタル・ダイアル 回路説明」を見て下さい。 リレー駆動回路 タイマー動作中に外部の回路を駆動するために継電器(リレー)を使用します。 リレーの駆動電流はリレーの種類により異なりますが、今回使用したリレー(OMRON製のG2VN-237P)は約30mAの電流で動作します。 タイマー制御回路のNANDゲート(74HC00)の最大出力電流は4mAですのでリレーを直接駆動することはできません。そこで、トランジスタ(TR1)を使用した駆動回路を設けます。今回使用したトランジスタ(2SC1815)の直流電流増幅率(hFE)を100としてR5の値を以下のように計算します。hFEは分類により値が違います。 コレクタに30mAの電流を流すためのベース電流は1/hFE=1/100なので0.3mA(300μA)です。NANDゲートのHレベルの電圧は+5Vで、トランジスタ(TR1)のVBEは約0.6Vですので、R5に加わる電圧は(5−0.6)=4.4Vです。この電圧で0.3mAの電流を流すための抵抗値は4.4V/0.3mA=14.7kΩになります。この値ではリレーを駆動するギリギリの値で余裕がありません。そこでNANDゲートの出力電流を考慮して5.6kΩにしました。この抵抗値の場合、ベース電流は4.4V/5.6kΩ=0.79mAになり、NANDゲートの出力許容電流以下です。また、コレクタ電流も計算では79mA流れることになります。でも、79mAは流れません。リレーの駆動電流(約30mA)までしか流れません。すなわち、トランジスタは飽和状態(ベース電流が多少変化してもコレクタ電流は変化しない状態)になります。コレクタとエミッタ間の電圧はほとんど0Vです。 トランジスタでの回路を使う場合、入力と出力の位相が180度変わることを考慮する必要があります。 NANDゲートの出力がHレベルのとき、トランジスタのコレクタ電圧はLレベル(0V)になります。 タイマー初期化回路 電源を投入したときにタイマーを初期化する回路です。 コンデンサと抵抗器を使用した簡単な回路です。 電源を投入すると電源電圧が上昇します。電源投入直後ではコンデンサに電荷が溜まっていないので、コンデンサの両端の電圧はすぐには上昇しません。N1の入力はスレッショルド電圧以下ではLレベルになり、タイマー制御用のフリップ・フロップ(FF)をタイマー停止状態にします。 コンデンサに電荷が溜まり終わると、コンデンサの電圧は上昇し、リセット動作は終了し、タイマー動作制御が可能な状態になります。 電源回路 今回、私が作成したタイマーは電源として+12Vと+5Vを別々に供給するようにしました。(両方の電圧が出る電源装置があったからです) +12Vだけで動作させるためには3端子レギュレータを使用します。 3端子レギュレータを使用した場合には外部から+5Vの電源を供給してはいけません。 +5Vを外部から供給する場合には3端子レギュレータを実装してはいけません。 |