目次電子回路工作入門電子部品の基礎知識




コイルというのは銅線などの線材を螺旋状に巻いたものです。
回路記号では  と表します。
また、コイルの性質の度合いを表す単位はヘンリー(H)が使われます。線材を巻けば巻くほどコイルの性質が強くなり、ヘンリーの値も大きくなります。コイルは中空のものより、鉄心に巻いたり、コアと呼ばれる鉄粉を固めたものに巻いた方のがより大きなヘンリー値が得られます。通常電気回路で使うコイルはマイクロヘンリー(μH)からヘンリー(H)単位のものまで幅広く使われます。

コイルはインダクターとかインダクタンスと言われることがあります。
(厳密にはインダクタンスと言うのはコイル成分の度合いを表すもので、部品そのものを表す言葉ではありません。コンデンサの場合はキャパシタンス、抵抗の場合はレジスタンスというのがそれぞれの性質の度合いを表すものです。)
コイルに交流電流が流れた場合、コイルに発生する磁束が変化します。そのコイルに他のコイルを近づけた場合、相互誘導作用(Mutual Induction)により、近づけたコイルに交流電圧が発生します。この相互誘導作用の程度を相互インダクタンス(単位はヘンリー)として表します。
コイルが一つだけの場合でも自分の発生する磁束の変化が自分自身に影響します。これを自己誘導作用と言い、その程度を自己インダクタンス(Self Inductance)で表します。

ヘンリーの定義は【あるコイルに毎秒1Aの割合(1A/s)で電流が変化するとき、他方のコイルに1Vの起電力を誘導するような2つのコイル間の相互インダクタンスを1ヘンリー(H)とする】となっています。
自己インダクタンスの場合は【電流の変化率が1A/sのとき1Vの起電力を発生する場合の自己インダクタンスを1Hと定める】となっています。







 コイルの性質
    線材を螺旋状に巻くと、まっすぐな線材と違ったいろいろな特性がでてきます。
    (他にもいろいろな特性があるのかも知れませんが、私の知っている特性を書いてみました。)

    その一つに電流の変化を安定にしようとする性質があります。
      電流が流れようとすると、コイルは電流を流すまいとし、電流が減ると流し続けようとする性質です。
      これは「レンツの法則」と呼ばれていて【電磁誘導作用によって回路に生ずる誘導電流は、常に誘導作用を起こす磁束の変化を妨げる方向に流れる】というものです。
この性質を利用して交流から直流に変換する電源の平滑回路に使われます。交流を整流器で直流にした場合、そのままでは脈流(リプル:Ripple)といって、交流成分の多い直流で、一定の直流ではありません。プラスの直流に整流した場合、マイナスの電圧成分は無くなりますが、0Vとプラス電圧を行ったり来たりしています。
平滑回路としてコンデンサとコイルを組み合わせた回路を使うと、コイルが電流の変化を阻止しようと働き、コンデンサが入力電圧が0Vになっても、蓄えた電気をそのとき吐きだして、安定した直流を得ることができます。
簡便な平滑回路ではコイルの代わりに抵抗器を使い、コンデンサの平滑機能だけのものもあります。


    二つ目の性質は相互誘導作用です。
      これは前にも書きましたが、二つのコイルを近づけると、片方の電力が、他のコイルにも伝えることができるというものです。

これを利用したのがトランスです。電力を与える方のコイル(入力)を一次側、電力を取り出す方(出力)を二次側と言います。一次側の巻き数と二次側の巻き数の比で二次側の電圧が変わります。
電源トランスなどは二次側として巻き線の途中から線を出して(タップという)複数の電圧を得られるようにしたものが多いです。



    三つ目の性質はみなさんおなじみの電磁石の性質です。
      電流が流れると、鉄とかニッケルとかを吸い付ける性質です。

この性質を利用したものに継電器(リレー)があります。電流が流れたときに鉄板を吸い付け、鉄板に取り付けたスイッチを閉じるというのもです。また、ピンポンと鳴るチャイムも電磁石の性質を利用したものです。


    四つ目の性質は共振です。
      コイルとコンデンサを組み合わせると、ある周波数の交流電流が流れなくなったり、流れやすくなったりします。ラジオの放送局を選択するチューナはこの性質を使って特定な周波数だけを選択しているわけです。
      共振について説明し出すとどんどん深みにはまりますので、もっと知りたい方は専門書を見て下さい。











 高周波用コイル

写真は小型のコイル部品の例です。
左のものは小さな鼓(ツヅミ)型のコアに細い銅線を巻いたもので、100μHのものです。高周波の共振、高周波の抑止などに使います。
大きさは直径が約4mm、高さが約7mmでした。
抵抗器と同じようにカラーコードで値を示しているものもあります。
種類は1μH位から数百μHまでいろいろあります。
1μH、2.2μH、3.3μH、3.9μH、4.7μH、5.6μH、6.8μH、8.2μH、10μH、15μH、18μH、22μH、27μH、33μH、39μH、47μH、56μH、68μH、82μH、100μH その他

左から二番目のものは棒状のコアに細い銅線を巻いたものです。用途は先のものと同じです。
値は470μHで、コアの直径は4mm、高さは10mm、コイルの直径は8mmあります。

右側の2つは高周波用のトランスです。トランジスタラジオなどの発振用、中間周波数(455KHzとか)の同調などに使われます。高周波なので、他の回路からの磁気による影響を受けないように、また、他に影響を与えないように金属のケース(遮蔽箱、シールドケース)に納められています。このケースは必ずアースにつなげなければいけません。
また、この種のものは同調用、発振用なので、インダクタンス値を変化させられるようになっています。


インダクタンス値の調節

    コイルの中心のコア部はネジ状になっていて、ドライバなどで回すことにより上下(コイルに入ったり、出たり)します。
    これによりコイルのインダクタンス値が変化します。
    コイルの巻き数を変えても良いのですが、いちいちそんなことは出来ません。

    FMラジオのチューナ部などは70MHz〜100MHz近くの高周波を扱いますので、コアに巻くとインダクタンス値が大きすぎるので中空のコイルが使われます。
    この場合の調節はコイルの巻き間隔で調節します。FMラジオなどを分解すると一見だらしない形のコイルがあります。(フニャっと曲がっている) これをきれいな形にしてはいけません。わざわざ曲げてインダクタンス値を調節してあるのですから。












 トロイダル・コイル



トロイダル・コイルは円筒形のコア(磁性体)に銅線を巻いたもので、コイルで発生する磁束が外部に漏れず、コイル効率が良く、磁束が他に影響を与えることも少なくすることができます。