回路図は一般的には先頭のページに掲載したように書かれますが、ここでは回路が理解し易いように左図のように書きました。 この回路図を見ると、コンデンサ(C)と抵抗器(R)による微分回路が構成されていることが分かります。A点に矩形波が入力されるとB点にはその微分波形が現れます。この微分波形は数学的な微分波形ではありません。矩形波を数学的に微分すると斜めの直線になりますが、この回路の場合は曲線です。CRによる微分回路については「微分回路」を参照して下さい。 電源を投入した直後、IC1、IC2の出力はHレベルまたはLレベルのいzずれかになります。ここではIC1の出力がHレベル、IC2の出力がLレベルと想定します。IC1の出力(A点)がHレベルになると、B点は最初A点と同電圧になります。しかし、コンデンサ(C)に電荷が溜まるにつれてB点の電圧は下がります。この下がる割合はコンデンサ(C)と抵抗器(R)の値により決まります。 B点のグラフ上のVTHはIC2のスレッショルド電圧を表しています。B点の電圧がVTHより高いとIC2の入力はHレベルとみなされ、IC2の出力はLレベルになります。逆にB点の電圧がVTHより低いとIC2の入力はLレベルとみなされ、IC2の出力はHレベルになります。ですから、B点がVTHより高い電圧の間、IC2の出力(D点)はLレベルになっています。コンデンサ(C)への充電(電荷が溜まる)が進み、B点の電圧がVTHより下がるとIC2の入力はLレベルとみなされ、IC2の出力(D点)は急激にHレベルへと変化します。 D点がHレベルに変化すると、IC1の出力(A点)がHレベルからLレベルへと変化します。すなわち、CとRの微分回路の入力電圧の極性が逆になります。コンデンサ(C)には先の動作により電荷が溜まっていて、両端には電源電圧(VDD)-スレッショルド電圧(VTH)の電圧になっています。この状態でCR回路に逆の電圧が加わるとB点の電圧は−スレッショルド電圧(-VTH)になります。その後、コンデンサ(C)には逆の電荷が溜まり始め、B点の電圧は徐々に上昇します。 B点がVTHの電圧に達すると、IC2の入力はHレベルとみなされ、IC2の出力(D点)はLレベルになります。それに伴い、IC1の出力(A点)はHレベルになります。この時のB点の電圧は電源電圧(VDD)+スレッショルド電圧(VTH)になります。 以降、VTHを境にコンデンサ(C)の充放電により発振動作が行われます。 抵抗器Rpですが、この抵抗器はIC2の入力に過大な電流が流れるのを防ぐ目的で付けられています。先に説明したように、B点には電源電圧より高い電圧または0Vより低い電圧が現れます。この電圧によりIC2が壊れないようにするための抵抗器です。CMOSの内部回路には異常な入力電圧からICを保護する回路が設けられています。この回路はダイオードの回路で、入力に規定以外の電圧が加わった場合、電流をバイパスさせています。しかし、過大な電流が流れると、この保護回路も壊れてしまい、ICそのものが壊れます。 CMOSの場合、入力電流は小さいので、数十KΩ〜100KΩ位の抵抗器が使われます。 この抵抗値は発振周波数には関係しません。 |