目次電子回路工作素材集スッチング・レギュレータ(2)インバーティング・コンバータ


インバーティング・コンバータ
性能測定
(MC34063A)



グラフでは出力電圧をプラス電圧で描いていますが、実際はマイナス電圧です。

 負荷変動による電圧・電流変動

出力に接続する負荷抵抗を小さくしていくと、ある時点から出力電圧が低下します。今回作成した回路では負荷抵抗器を8Ω以下にした時点から出力電圧が低下し始めます。回路構成はほぼステップダウン・コンバータと同じですが、使用可能領域が狭くなっています。回路構成上での違いはコイル(L1)の値が違います。ステップダウンでは250μH、インバーティングでは72μHを使用しています。コイルに蓄えられるエネルギーが少ないために使用可能領域が狭くなっていると思ったのですが、そうではありませんでした。
試しに、インバーティング・コンバータでのコイル(L1)を250μHとしてみた場合の性能測定結果を以下で示します。





 負荷変動による電力変動

上の図は負荷抵抗の値を小さくした場合の入出力電力および効率の変化を表しています。8Ω以下の抵抗の場合でも出力電力は若干増加しています。けれども、出力電圧が低下しているので、使用することはできません。
コンバータでの損失(入力電力−出力電力)は約2Wですが、出力電力が小さいので効率は良くありません。




 インダクタンスによる変化


コイル(L1)のインダクタンス値を250μHに変更した場合の特性を測定してみました。特性に大きな変化はありません。出力抵抗値を下げた場合の使用可能領域が若干広がります。しかし、ステップダウン・コンバータのような特性は出ていません。
ステップダウン・コンバータの場合、レギュレータがONのときに入力電力が出力電力に直接加わります。けれども、インバーティング・コンバータの場合、コイル(L1)に蓄えられるエネルギーだけを出力する構造です。インダクタンス値を大きくすれば出力電力の限界値が上がると考えたのですが、大きくは変化しませんでした。この辺が限界のようです。

グラフにはしていませんが、タイミング・コンデンサの値を1500pFから470pFに変更してスイッチング周波数を上げてみました。この場合も特性はほとんど変化しませんでした。むしろ、若干特性が悪くなっています。(測定誤差の範疇)
ダイオードの損失などが影響しているのかもしれません。




 脈流電圧


上の写真は無負荷時の出力に出ている脈流電圧の波形です。電圧は約10mVp-pです。出力電圧が5Vですから0.2%の脈流になります。
インバーティング・コンバータの場合の出力電圧はマイナスの電圧なので、ステップアップ、ステップダウンと比べると波形の上下が逆になります。

この脈流電圧は負荷に電流が流れるとほとんどなくなり、きれいな直流電圧になります。今回の回路では二次フィルタを設けていますので、負荷に電流がながれると二次フィルタのコイル(L2)の平滑作用が働き、脈流電流の流れを阻止するためと思われます。