目次→電子回路工作素材集→スッチング・レギュレータ(2)
このページではMC34063Aのブロック図をもとに回路の動作を説明します。ブロック図は「スイッチング・レギュレータ(2)」を参照して下さい。 MC34063Aは以下のような機能ブロックから構成されています。 以下、各々のブロックについてその動作を説明してみます。説明はブロック図をもとに私なりの解釈をしたものですので、細かいところは実際と違うかもしれません。 基準電圧比較ブロック 基準電圧は1.25Vです。出力電圧を分圧した比較電圧が基準電圧より低いか、高いかを電圧比較器(コンパレータ)を使用して検出します。スイッチング・レギュレータは比較電圧が基準電圧より低ければ入力から電力を送り込み、高ければ出力への電力を抑制するように動作します。基準電圧のマイナス側は接地でなくてもかまいません。これによりインバーティング動作(マイナスの電圧を作る)をさせることができます。 出力電圧をR1とR2で分圧して比較電圧を作ります。R1およびR2は外付け部品です。比較電圧は電圧比較器のマイナス入力に接続されます。 基準電圧発生回路からは1.25Vの電圧が出力され、基準電圧は電圧比較器のプラス入力に接続されています。 比較電圧が基準電圧より高いと、電圧比較器のマイナス入力が高いので比較器の出力はLレベル状態になります。逆に比較電圧が基準電圧より低いと、電圧比較器のプラス入力が高いので比較器の出力はHレベル状態になります。後ほど説明しますが、電圧比較器の出力がLレベルになると入力から電力を取り込むのを抑止します。Hレベルになると電力を取り込む動作をします。 R1の値を変えることにより出力電圧を変化させることができます。 ステップ・アップおよびステップ・ダウン・コンバータの場合にはここで紹介しているような外付け回路にします。 インバーティング・コンバータの場合には左の図のような外付け回路にします。 出力電圧がマイナス側に高くなるとR2に流れる電流が増えます。それによりR2の両端の電圧は上がります。すると基準電圧より比較電圧の方が高くなり電圧比較器の出力はLレベル状態になります。そのため、入力電力の取込が抑止され、出力電圧はプラス側へ低くなります。 出力電圧がプラス側に低くなるとR2の電圧は下がり、基準電圧より比較電圧の方が低くなります。その場合、電圧比較器の出力はHレベルになり入力電力が取り込まれ、出力電圧はマイナス側へ高くなります。 R1の値を変えることにより出力電圧を調整することができます。 発振回路ブロック 発振周波数(スイッチング周波数)は外付けのコンデンサで変化させることができます。発振回路の出力はスイッチング制御用のFF(フリップ・フロップ)に伝えられ、スイッチング・トランジスタを駆動します。 発振回路はさらに過電流検出も行っています。入力に入れられる過電流検出抵抗器の電圧を検出し、過電流状態の場合には発振動作を抑止し、スイッチング・トランジスタを破壊から保護します。過電流の検出電圧は0.3Vです。 今回の場合、Rscは0.22Ωの抵抗器を使用しました。入力電流の上限値は 0.3V / 0.22Ω = 1.36 A になります。抵抗器の消費電力は (1.36A)2 x 0.22Ω = 0.41 W ですので、1Wのものを使いました。 下の図はデータシートに載っているタイミング・コンデンサと発振周波数の関係を表しているグラフです。 このグラフを見ると発振器の出力はスイッチがONしている時間の方が長いことが分かります。 470pFのコンデンサを使用した場合、ton = 20μS、toff = 3μS になります。 周波数は 1 / (20 x 10-6 + 3 x 10-6) = 43kHz です。 100pFでは 1/(7x10-6+1.5x10-6) = 118kHz になります。 Vccが5Vでのグラフですので、使用する入力電圧により少し違う値になります。 周波数が高いほど平滑回路で使用するコイルを小さく出来るのですが、フライホイール・ダイオード(ショットキー・バリア・ダイオードを使用)での損失が大きくなります。100kHz以下の周波数で使用した方が良いと思います。 スイッチング・ブロック スイッチング・トランジスタは電圧比較器の出力および発振器の出力により制御されます。 トランジスタの制御にはSRタイプのフリップ・フロップ(FF)が使用されています。SR−FFではSがLレベルになるとQがHレベルになりますが、ここで使用されているFFは出力にインバータ(LとHを逆にする)が入っています。以下の説明ではインバータの出力をQとします。SがLレベルになるとQがLレベルになります。また、RがLレベルになるとQがHレベルになります。SがLレベルの場合にはRの状態に関係なくQはLレベルになります。 このインバータのことはデータシートには書かれていません。動作を考えるとインバータが必要です。回路図では白い丸がインバータを表します。実際のICで動作確認すると比較電圧が基準電圧より高いとスイッチング・トランジスタがOFFになるので、インバータが入っていることが分かります。
基準電圧より比較電圧が高い場合、電圧比較器(C)の出力はLレベルになります。NANDゲート(N)は入力の一つでもLレベルになると出力はLレベルになります。ですから、この場合、発振器(OSC)の出力に関係なくSはLレベルになります。SがLレベルの場合、QもLレベルになり、スイッチング・トランジスタはOFF状態になります。スイッチング・トランジスタがOFFの場合、入力電力は出力に伝わらなくなり、出力電圧は低下します。
基準電圧より比較電圧が高い場合、電圧比較器(C)の出力はHレベルになります。この場合、NANDゲート(N)の出力は発振器(OSC)の状態により変化します。 OSCの出力がHレベルの場合、Nの出力はHになります。Rにもインバータが入っていますので、OSCの出力がHの場合、RはLレベルになりQはHレベルになります。QがHになるとスイッチング・トランジスタはON状態になります。 OSCの出力がLレベルの場合、Nの出力もLになります。この場合、QはLになるので、スイッチング・トランジスタはOFF状態になります。
|