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リニア・レギュレータとの電力損失比較
LM317のような3端子レギュレータはリニア・レギュレータまたはシリーズ・レギュレータと呼ばれています。 このタイプのレギュレータは出力電流と入力電流がほぼ同じです。ですから、入力電力(入力電圧 x 入力電流)と出力電力(出力電圧 x 出力電流)との差はレギュレータで熱として消費されます。 左の図は入力電圧が12V、出力電圧が5Vとして出力電流が 0.25A、0.5A、1Aの場合の出力と損失の割合を表したものです。 入力電力の約58%が熱としてレギュレータで消費されます。そのため、レギュレータにはかなり大きな放熱器を付ける必要があります。
スイッチング・レギュレータではスイッチング動作により入力をパルスにして出力します。パルスの幅は出力が必要とする電力により変化させます。出力電力が小さい場合にはパルス幅は狭く、出力電力が大きくなるとパルス幅は広くなります。実際には出力電力を検出しているのではなく、出力電圧が一定になるようにパルス幅を制御しています。 スイッチング・レギュレータはリニア・レギュレータのように出力出来ない電力を熱として消費することはありません。ですから、リニア・レギュレータのような大きな放熱器は不要です。 仕様では12Vの入力電圧で出力電流を1A流した場合の効率は77%となっています。この場合、レギュレータでは1.5Wが消費されることになります。 実測では入力電力は6Wでしたのでレギュレータでの消費電力は1Wになります。ですから、効率は83%になります。 リニア・レギュレータの場合は7Wですので、非常に効率が良いことになります。 スイッチング・レギュレータの動作 スイッチング周波数は52kHzで、発振回路を内蔵しています。電圧を一定に保つための基準電圧としては1.23Vが使われ、出力電圧を分圧して比較し、パルス幅の制御を行っています。その他に異常温度検出回路、出力電流制限回路なども内蔵されています。 5番ピンに+5Vを加えるとスタンバイ状態(出力停止)になり、その場合の入力電流は50μAと低消費電力になっています。 出力平滑回路 スイッチング・レギュレータの場合、出力電圧の平滑回路が必須です。高周波でスイッチング動作しますのでコイル、ダイオードの特性も考慮する必要があります。 以下に平滑回路の動作を説明します。 レギュレータのトランジスタがONになると、チョーク・コイル(L)、コンデンサ(C)そして負荷に電流が流れます。コイルとコンデンサには電気エネルギーが蓄えられます。 レギュレータのトランジスタがOFFになると、チョーク・コイルおよびコンデンサに蓄えられた電気エネルギーにより、負荷に電流が流れ続けます。 コイルに蓄えられた電気エネルギーはダイオード(D)を通して流れます。スイッチング周波数はLM2575の場合、52kHzと比較的高周波です。ですから、ダイオードとしては逆回復時間の短いショットキー・バリア・ダイオードまたはファースト・リカバリー・ダイオードを使用します。スイッチング・レギュレータで使用するこのダイオードをフライホイール・ダイオードと呼ぶこともあります。 ダイオードは順方向に電流が流れている状態で急に逆の電圧が加わってもしばらくは電流が流れてしまいます。この状態のときには整流動作は行われず、銅線と同じです。この状態からダイオード特性を取り戻すまでの時間が逆回復時間です。高速でスイッチング動作をする場合、この特性が非常に重要になります。スイッチング・トランジスタがOFF状態(チョーク・コイルのエネルギーがダイオードに流れている状態)からON状態になったときダイオードが導通状態になっていると、スイッチング・トランジスタからのエネルギーが接地に流れてしまい、出力回路に流れないことになります。 負荷に加わる電圧は左の図のようになります。この図は脈流分を強調して描いていますが、実測では70mV(1.4%)位です。 この脈流分はコイルおよびコンデンサの容量によります。 コンデンサには充放電電流が流れますので脈流を少なくするためには等価直列抵抗値(ESR:Equivalent Series Resistance)の小さなものを使用します。 スイッチング・レギュレータ使用上の注意 スイッチング・レギュレータは高周波でのスイッチング動作をしますので、その影響を極力抑えるために以下のような注意が必要です。
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