目次電子回路工作素材集PLLシンセサイザ発振器(2)


PLLシンセサイザ発振器(2) 回路説明



 PLLシンセサイザ発振器(MC145163)
    基準周波数
      今回の発振周波数は10.24MHzとしています。

    基準分周比
      今回の回路では比較周波数の分周比により出力の周波数を10KHz単位で変化させるために、分周比は1024に固定しています。

    比較分周比
      アマチュア無線の144MHzのバンド幅は2MHz(144.0MHz〜146.0MHz)であるため、PLLの出力周波数は133.3MHz〜135.3MHzとしています。(10.7MHz低い周波数)
      MC145163に入力される比較周波数はSN16913により119.3MHzと混合され、14MHz〜16MHzになります。
      位相比較周波数は10KHzですので、比較分周器の分周範囲は1400〜1600となります。
      10のBCD指定は1に固定し、10のBCD指定は4または5を選択できるようにします。
      10のBCDはビットで表すと0100または0101となり、2のビットを0か1に変更できるようにします。
      10および10はBCDコードで0〜9を指定します。


      以上の分周比指定により10KHz単位で200チャネルの周波数を指定できることになります。





 電圧制御発振器(VCO)
    電圧制御発振器の発振周波数はPLLシンセサイザの出力により制御され、安定した周波数の発振動作を行います。

    発振回路としてはコルピッツLC発振回路を使用しています。
    C3とC4がコルピッツ回路の分圧用コンデンサになります。
    C5、D1およびD2のコンデンサ成分で発振周波数を変化させます。

    D1およびD2は可変容量ダイオード(バリキャップ・ダイオード)で逆方向電圧を加えるとダイオード自体の容量(キャパシタンス)が変化します。逆方向電圧を高くすると容量は小さくなります。
調整の幅を広げるためにダイオードを2つ使用しています。
    MB87014Aのチャージ・ポンプから出力される制御用の信号はパルス状の信号なので、R4、R5、R6およびC6によるフィルタを通して直流の電圧変化に変換しています。



 ダブル・バランスド・ミキサ(SN16913)



上面図

    2つの入力周波数を混合して差分の周波数を出力します。
    今回の場合、VCOの周波数133.3MHz〜135.3MHzと外部発振器の119.3MHzとを混合し、14MHz〜16MHzを出力するようにしています。
    混合を行うと差分だけでなく加算された周波数(252.6MHz〜254.6MHz)も出力されます。 200MHz位の周波数はMC145163では対応できないので、14MHz〜16MHzが入力として使われます。

     定格

       最大定格
項 目記号定格値単位
電源電圧VCC16.5V
入力電圧Vi7.0V



       電気的特性
項 目記号最小標準最大単位
電源電圧VCC4.015.0
V
消費電流ICC
15.0
mA
RF入力電圧


300mVp-p
LOCAL入力電圧


300mVp-p





 出力バッファ

    出力バッファはこの発振器をつなぐ先の回路によって発振回路の動作に影響を与えないようにするために設けています。
    出力バッファとして同じ回路を2つ設けています。片方は送信機用、もう片方は受信機用として使用します。
    出力バッファにはFETトランジスタを使用しています。
    FETとは電界効果型トランジスタで、入力(ゲート)に加わる電圧で出力電流(ドレイン電流)を制御することができます。通常のトランジスタはベースに流れる電流で出力電流を制御します。FETの場合、入力電流を流さなくて良いので、シンプルな回路構成にすることができます。