目次事例集安定化電源装置レギュレータ


スイッチング・レギュレータ 回路説明
(HPH12002M)



スイッチング・レギュレータ




HPH12002Mはスイッチング・トランジスタ回路、電圧制御回路、レギュレータ・コイル、ダイオード、放熱器などスイッチング・レギュレータの構成機能を全て持っているICです。外部にコンデンサを取り付ければレギュレータとして動作します。出力電圧を可変抵抗器により変化させることができます。
HPH12002Mは2つパラレルに接続(並列接続)することにより2倍の出力電流を取り出すことができます。





レギュレータのパラレル接続




HPH12002Mは2つまでパラレル接続することができます。
接続は単純に入力端子、接地端子、電圧検出端子を接続すれば良いのです。ただ、出力端子については負荷バランスの関係で抵抗器を介して接続します。





負荷バランス抵抗器


今回使用したレギュレータは特性がそろっているものを使用しています。でも、ピッタリと特性が合っているものはありません。両方のレギュレータの出力を単純に接続すると出力電圧の高い方からだけ電流が流れ、均等な出力を得ることができません。
レギュレータの出力に抵抗器を介して接続することにより、レギュレータからの出力をほぼ均等にすることができます。
図でIC−Aのレギュレータの出力がIC−Bのレギュレータの出力より高いとします。
電流はIC−Aの方が多く流れ、抵抗器(R)の両端の電圧は上昇します。出力電圧(Vout)は一定ですので、IC−Aの出力電圧が下がり、IC−Aからの出力電流が減少します。IC−Aの出力電圧がIC−Bの出力電圧より下がると、出力電流はIC−Bから流れることになります。
以上のような動作によりピッタリとは一致しませんが、両方のレギュレータから平均的に電力を取り出すことができます。
抵抗値を大きくするとより負荷バランスは良くなりますが、抵抗器で電力が消費されてしまい、効率は良くありません。





電圧調整回路




電圧調整には250KΩの可変抵抗器を使用します。一つの可変抵抗器だけでも良いのですが、電圧の変化範囲が広い(5〜30V)ので目的の電圧にあわせるのには苦労する場合があります。
可変抵抗器の回転軸角度を300度とすると約0.08V/1度になります。数字の上では問題ないように見えますが、通常の可変抵抗器で1度づつ変化させることはできません。5度(1/60)で0.4Vの変化。この辺が実際の限界です。0.1V毎の設定をするのには結構大変です。
必要とする電圧精度にもよりますが、今回の回路では電圧の微調整ができるように工夫しました。
2連の可変抵抗器(同じ軸に2つの可変抵抗器が取り付けられていて、抵抗値が同時に変化する)と通常の可変抵抗器を組み合わせました。

VR1のそれぞれの抵抗値は同時に変わりますので、軸の回転角度に比例してレギュレータの電圧調整に加わる電圧が変化します。VR2はVR1で分圧した電圧が両端に加わっていますので、VR2を変化させると狭い範囲で電圧を変化させることができます。
レギュレータの電圧調整端子を出力側にすると出力電圧は低くなります。実測では最低で5Vでした。逆に電圧調整端子を接地側にすると出力電圧は高くなり、無負荷の場合では最高で35Vでした。最高電圧は入力の電圧によって変わります。無負荷の場合、出力電圧はほぼ入力電圧と同じ電圧になります。出力電力が大きいと入力の電圧は下がるので、最高出力電圧は低くなります。

VR2で調整できる電圧の範囲は以下の式で求められます。(ちょっと複雑)
最低電圧を5V、最高電圧を30Vとした場合の式です。

VR2をA点側にしたときの出力電圧

VR2をB点側にしたときの出力電圧



Ra=0Ω(最高電圧)、Rb=250kΩ、Rc=20kΩとし、VR2をA点およびB点に変化させた時の出力電圧は以下になります。
A点の場合

B点の場合



Ra=250kΩ(最低電圧)、Rb=250kΩ、Rc=20kΩとした場合のA点およびB点に変化させた時の出力電圧も同様で以下になります。
A点の場合

B点の場合

すなわち、VR2による出力電圧調整範囲は約1.7Vです。

VRの回転角度を300度とすると、0.1Vの電圧を変化させるのには約18度回転させることになります。この角度であれば容易に調整ができます。

以上のように計算したのですが、
実際には計算通りにはなりませんでした。

これは、レギュレータ内部の電圧調整回路の関係で可変抵抗器の抵抗値の変化による出力電圧の変化が直線的変化をしないためです。
可変抵抗器の回転角度による出力電圧の変化を計測すると以下のようになりました。

主電圧調整用の抵抗器の中央付近は電圧の変化が緩やかです。そのため微調整用の抵抗器を変化させても電圧はほとんど変化しません。
レギュレータの内部回路の関係なので、これ以上の工夫は断念しました。
主電圧調整抵抗器の両端での電圧変化は急激です。この領域で微調整は有効なので、実用上は問題ありません。





出力フィルタ回路




HPH12002Mから出力される電圧には脈流が含まれています。出力にフィルタ回路を付けることにより出力電圧の脈流を少なくすることができます。コイルのインダクタンスは数μHのものでOKです。今回は自分で巻いた25μH(測定結果)のトロイダルコイルを使いました。





トランス回路


AC100VをAC30Vに変換します。
AC30Vをダイオードブリッジで全波整流して直流に変換します。このときの電圧はDC30Vより高くなります。レギュレータの最大入力電圧は40Vですので、これを越えないようにトランスのタップを変えて調整します。2次側のタップを低い電圧にすれば直流電圧も当然下がります。
1次側(AC100V側)にタップがあればそちらを変えても調整できます。AC110Vのタップにすれば、この場合も直流電圧を下げることができます。

一次側端子二次側端子直流電圧
100V30V42V
100V27V38V
100V24V34V
110V30V39V
110V27V35V
110V24V31V

ダイオード・ブリッジを接続して
無負荷状態の電圧を測定すると
左のようになりました。

入力の電圧変動を考慮して
一次側:110V
二次側:27V
を使用することにしました。