目次PIC回路集リモコン


無線リモコン送信機 回路説明


高周波発振回路

高周波の発振回路にはコルピッツ回路を使用しています。

左の図はコルピッツ発振回路の基本形です。
発振周波数の概算値は以下の式で求められますが、高周波回路では配線の長さ、トランジスタの持っているキャパシタンスなどが影響するので、計算で求めるより、実際に作って確かめる方が現実的です。
この式は簡略化した式で、正確にはトランジスタの条件が加わります。

この回路の動作を正確に理解するためには電子工学の専門知識が必要なのでここでは説明できません。大ざっぱに説明するとコレクタとベースに発生する電圧をC1とC2で分圧し、エミッタに帰還させることによって発振動作が行われます。

今回の発振回路を左に示します。この回路のC2およびC3には10000pF(103=10x103)を使っています。
今回の回路では約83MHzで発振させます。83MHzにおける10000pFの容量リアクタンス(交流での抵抗値)を計算すると以下のようになります。

すなわち、C2とC3は高周波でみるとほとんど抵抗が無く、線で結ばれていると同じ状態ということになります。

上記の回路を高周波で見た場合の回路にしてみると左の図になります。
この回路はLに並列にC4が入っていますが、コルピッツ発振回路そのものであることが分かります。

コイル(L)の値は計算だけで出すのは難しく、今回の場合もカット&トライで決めました。発振周波数はFM放送局の周波数を避けて83MHzにしましたが、強い電波と重ならなければこの周波数にこだわる必要はありません。
実際のコイルは0.6mm径の錫メッキ線を4.6mm径の棒(プラスドライバ)に7回巻き付けたものを使用しています。中間タップ(電源の接続点)はコレクタに接続する側から4巻半の位置にしています。このタップの位置は感覚的に決めました。次段の増幅器への供給電力の関係でほぼ中間にしました。発振周波数の調整はC4で行い、周波数の微調整はコイルを伸ばしたり縮めたりして行います。一度調整すれば基本的に触ることはありません。振動によってコイルが変形すると周波数が変わってしまいます。周波数の変化を防ぐためにコイルの線材には少し太い0.6mm径を使いました。
高周波回路の場合、配線もコイルの一部になります。ですから、パターンを描く際には高周波が通る配線はできるだけ短くなるようにします。








高周波電力増幅回路

発振器で作った信号を増幅する回路です。電波を発射するためにアンテナを付けますが、発振器に直にアンテナを付けるとアンテナの位置などにより発振周波数が変動してしまいます。この増幅回路はそれを防ぐ役目もしています。

発振器の信号を受け取る回路として通常は1次コイルと2次コイルのある高周波トランスが使われます。
今回の回路では1つのコイルだけでトランスの機能を行わせています。ベースが高周波的には接地電位になっているので1つのコイルだけで信号を電力増幅器に伝えることができます。


この電力増幅回路は非常に単純な回路です。ベースに少しの電流を流してB級に近い増幅器としています。高周波を扱うのでA級増幅にする必要はありません。本当はコレクタにも同調回路を付けた方がよいのですが、高出力を出すつもりがないので、簡略化しています。
電波を発射する場合、その出力は電波法で規定されています。今回の回路で出せる電波は非常に微弱なので電波法上の問題はありません。この回路は微弱電波だから使える回路です。



制御コード発生回路

送信機の電波を制御コードで断続させて受信機側の回路を制御します。当初は制御コードで発振周波数を変え、周波数変調(FM)方式にしようと考えましたが、単純に電波をON/OFFする方式にしました。
制御コードはPICを使用してソフトウェアで制御しています。これにより、制御コードを簡単に変更できます。この制御コードには2つの目的があります。
1つ目はセキュリティを確保するためです。電波を使うので、特定な周波数で変調された電波(1kHzで変調されていたら回路1を制御、2kHzで変調されていたら回路2を制御とか)だと、偶然にそのような電波を受信してしまう可能性があります。今回使用する制御コードは8ビットのコードを使用しています。コード認識に先立ち特定の断続間隔であることを認識し、さらにその組み合わせが数回繰り返されないと正常な制御コードと認識しないようにしています。
2つ目は制御の種類を変えることです。8ビットの組み合わせで制御する内容を指定します。今回の回路では2種類のコードのみを使用していますが、制御の入力回路を設計すればもっと多くの種類の制御ができます。
PICのRA4ポートを使用して発振回路の動作(発振/停止)を制御しています。RA4ポートを使用しているのはオープンタイプになっているためです。他のポートはON(Hレベル)の時には+5Vが出力され、OFF(Lレベル)のの時には0Vが出力されます。RA4はON(Hレベル)の時には出力が接地から切り離されるだけで電圧は出力されません。ですから、発振器から見るとPICが接続されていないのと同じ状態になり、発振回路は発振動作をします。RA4がOFF(Lレベル)の時には0Vが出力されます。RA4が0Vになると発振回路のベースが接地されるので、発振は停止します。









電源スイッチおよび制御コード選択回路


送信用の回路は制御スイッチを押したときだけ動作し、制御スイッチが押されていない場合には全ての回路を停止させる必要があります。そうしないと電池がすぐに無くなってしまいます。ですから、制御スイッチは電源と制御コードの選択を兼ねることになります。制御スイッチは電池のプラス側に入れ、どちらのスイッチを押しても回路に電源が供給されるようにしています。ダイオードを使用しているのはスイッチが押された方のPIC入力だけをHレベルにするためにです。



電源回路

送信機の電源には+9Vの電池(006P)を使用しました。PICの電源電圧は+5Vなので3端子レギュレータを使用して電圧変換をしています。電池の電圧は電力の消費とともに下がります。今回使用しているコルピッツ発振回路は電源電圧が変動すると発振周波数が変化します。受信側の電波検出は送信電波が多少変わっても動作できます。ですから、発振回路には安定化電圧回路は使っていません。ただ、電池の電圧が極端に下がると送信機の発振周波数が受信機の検出範囲を超えて動作しなくなります。
PICは電源および全てのI/Oポートの電圧は+5V以下で使用する必要があります。今回の回路でも+9Vの回路と接続する部分(RA0,RA1,RA4)は+5V以下になるようにしています。