コンデンサとは電気を蓄える機能を持っています。と言っても一般には電気を蓄えること以外に直流電流を遮り交流電流を通すという目的でも使われます。 回路図の記号では で表します。 コンデンサの構造は基本的には二枚の電極板を向かい合わせにした構造を持っています。 ここに直流電圧をかけると、それぞれの電極に電荷と呼ばれる電気が蓄えられ、蓄えている途中では電流が流れます。蓄えきった状態では電流は流れなくなります。 10μF位の電解コンデンサにアナログメータ形式のテスタを抵抗測定モードでつなぐと、一瞬電流が流れテスタの針が振れるのが分かります。でも、すぐにゼロとなってしまいます。 テスタのつなぎ方(コンデンサの足につなぐテスタの測定棒)を逆にすると、また、一瞬電流が流れるのが分かります。ですから、直流電圧がコンデンサに掛かった場合、一瞬、電流が流れますが後は流れないので直流を通さない(直流カット)の用途にも使われます。 しかし、交流の場合には先ほどのテスタの測定棒をしょっちゅう入れ替えているのと同じですので、その都度電流が流れることになり、交流電流は流れることになります。 二枚の電極の間に絶縁体(誘電体と言う)を入れて(絶縁体を電極で挟む)コンデンサを作るわけですが、この材質によっていろいろな種類のコンデンサがあります。何も挟まずに空気を誘電体とするコンデンサもあります。 コンデンサの容量を表す単位はファラッド(F)が使われます。一般にコンデンサの蓄えられる電荷容量は非常に小さく、μF(マイクロ・ファラッド:10-6F)とかpF(ピコ・ファラッド:10-12F)の単位が使われます。 最近では電気二重層コンデンサ(スーパー・キャパシタ)というファラッド単位の容量を持ったコンデンサも登場してきました。 コンデンサの容量の表示に3桁の数字が使われることがあります。部品メーカによって容量を3桁の数字で表すか、そのまま表示するか異なっています。3桁の数字で表す場合には頭の2桁の数字が容量の第一数字と第二数字、3桁目が乗数になります。 表示の単位はpF(ピコ・ファラッド)になっています。 例えば、103ですと10×103=10,000pF=0.01μFとなります。 224は22×104=220,000pF=0.22μFです。 100pF以下のものは容量をそのまま表示してあります。47=47pF 耐電圧 コンデンサを使用する場合には、耐電圧に注意する必要があります。この電圧はコンデンサの種類によって違います。特に電解コンデンサの耐電圧は低いので、注意が必要です。電解コンデンサの耐電圧はワーキングボルテージ(WV)として表示されています。 以下、代表的なコンデンサを紹介します。 アルミ電解コンデンサ(単に電解コンデンサ または ケミコン(ケミカル・コンデンサ)とも言う) このコンデンサは誘電体として薄い酸化膜を使い、電極としてアルミニュームを使っています。 誘電体を非常に薄くできるので、コンデンサの体積に比べて大きな容量を得ることができます。 大きな特徴は極性(プラス電極、マイナス電極が決まっている)があることです。普通はコンデンサ自体にマイナス側の足を示す表示が付いています。また、かけられる電圧、容量(電気を蓄えられる量)も表示されています。極性を間違えたり、電圧が高すぎたりすると、コンデンサが破裂(パーンと音を立てて飛び散るので非常に危険)してしまいます。絶対に間違えてはいけません。(通常、回路図にも+の記号で極性を明記します) このコンデンサは1μFから数千μF、数万μFなど比較的大きな容量が得られ、主に電源の平滑回路、低周波バイパス(低周波成分をアースなどに逃がして回路動作に悪影響を与えない)などに使われます。ただ、コイル成分が多く高周波には向きません。(周波数特性が悪いと言う) 左の写真は容量、電圧が違う電解コンデンサの例です。 左から 1μF(50V)[径5mm、高12mm] 47μF(16V)[径6mm、高5mm] 100μF(25V)[径5mm、高11mm] 220μF(25V)[径8mm、高12mm] 1000μF(50V)[径18mm、高40mm] のものです。 ただし、サイズについては決まっているわけではなく、メーカによっても異なります。ここに示したものはあくまで参考として下さい。 電解コンデンサには右の写真のように、マイナス側の電極を示す表示があります。間違えないように注意しなければいけません。 固体タンタル・コンデンサ(単にタンタル・コンデンサとも言う) 電極にタンタルという材料を使っている電解コンデンサです。アルミ電解と同様、比較的大きな容量を得ることが出来ます。また、温度特性(温度の変化によって容量が変化する。容量が変化しない方が特性が良いと言う)、周波数特性とも電解コンデンサより優れています。 アルミ電解コンデンサはクラフト紙などに電解液をしみ込ませたものを金属アルミで挟み、巻き付けた構造をしていますが、タンタル電解コンデンサの場合はタンタル・パウダを焼結して固めたときにできる隙間を利用する構造となっており、巻き取り構造でないため上記のように特性が良いのだそうです。あくまでもアルミ電解に比べての話。 このコンデンサも極性があり、通常、コンデンサ自体に+の記号で電極を表しています。これも絶対に間違えてはいけません。 価格は電解コンデンサよりも高価であるため、温度による容量変化がシビアな回路、ある程度周波数の高い回路などに使用します。また、アルミ電解コンデンサで発生するスパイク状の電流が出ないので、アナログの信号系にはタンタル・コンデンサを使うのが常識だそうです。マニアックに使わなければ電解コンデンサでも十分です。 左の写真はタンタルコンデンサの外観で丸っこい形をしています。 容量は左から 0.33μF(35V) 0.47μF(35V) 10μF(35V) のものです。 タンタルコンデンサも電解コンデンサと同じようにプラス・マイナスの極性を持っています。 電極(リード線)のプラス側を示す記号がコンデンサ自体に記されています。 セラミック・コンデンサ セラミック・コンデンサは電極間の誘電体としてチタン酸バリウムなどの誘電率の大きなものが使われています。このコンデンサはインダクタンス(コイルの性質)が少なく高周波特性が良いのが特徴で高周波のバイパス(高周波成分または雑音をアースに逃がす)によく使われます。 形は円盤型をしており、容量は比較的小さいです。 写真の左側は100pF(ピコ・ファラッド:10-12F)のもので、円盤の直径が3mmほどです。 右側は103と印字されており、10×103pFですから0.01μFとなります。円盤の直径は約6mmでした。 電解コンデンサのような電極の極性はありません。 もっと大きな形のものもあります。 セラミックは強誘電体の物質でアナログの信号系回路使うと信号にひずみが出てしまうので、そのような回路には使用できません。 積層セラミック・コンデンサ 積層セラミック・コンデンサは電極間の誘電体として高誘電率系セラミックを多層構造に使用していて、温度特性、周波数特性が優れており、さらに小型であることが特徴です。 デジタル回路で扱う矩形波信号は比較的高い周波数成分が含まれています。 このコンデンサの周波数特性が良いこと、小型であることで、バイパス用として良く使われます。 温度特性も良いので、温度変化を嫌う回路にも使用されます。 写真左のものは容量が104と表示され、10×104pF = 0.1μF という容量で、幅4mm、高さ3mm、厚さ2mmのものです。 写真右は容量103(10×103pF=0.01μF)のもので、丸い部分の直径が2mm、高さが4mmでした。高密度実装をするのには右側の形状のが良いこともあります。 電極の極性はありません。 スチロール・コンデンサ 電極間の誘電体としてポリスチレン・フィルムが使われています。 このコンデンサはフィルムを巻いた構造のため、インダクタンス(コイル)成分が大きく、高周波には使えません。数百KHz以下のフィルタ回路とかタイミング回路などで良く使われます。 写真のものは電極に銅箔を使っていて、赤っぽい色をしていますが、電極としてアルミ箔を使用して銀色のものもあります。 銅箔の方のが周波数特性が良いようですが、シビアな使い方をしなければ、問題はないと思います。 銅箔の方が少し高いです。 写真左は100pFで太さ5mm、高さ10mmです。写真真ん中は1000pFで太さ5.7mm、高さ10mmです。写真右は10000pFで太さ10mm、高さ24mmです。 電極の極性はありません。 電気二重層コンデンサ(スーパー・キャパシタ) これが驚異のコンデンサ、スーパー・キャパシタです。 なんと容量は0.47F(470,000μF:47万μF)です。 私はこのコンデンサを実回路で使ったことがありません。 このような大容量のコンデンサを電源回路などで使用するときには注意が必要です。と言うのはコンデンサが空っぽ(電気が貯まっていない)時には電流がどんどん流入するので、整流器などが過電流で破壊してしまうことがあるからです。 通常の電源回路の平滑コンデンサは1,000μF位ですので、すぐにコンデンサは充電されますが、こんなコンデンサを使ったら、充電完了まで回路をショートしているのと同じです。保護回路を設けないと危険です。 容量が大きいので、短時間のバックアップ(バッテリーほど長時間ではないが)などに使えるのではと思います。 大容量のわりには形が小さく、直径が21mm、高さ11mmです。 電極に極性がありますので、注意が必要です。 ポリエステル・フィルム・コンデンサ(マイラ・コンデンサともいう) 薄いポリエステル・フィルムを両側から金属で挟み、円筒状に巻いたものです。 安価で使いやすいのですが、高い精度はありません。だいたい±5%から±10%位です。 写真左から ・容量:0.001μF(.001Kと表示) 幅5mm、高さ10mm、厚さ2mm ・容量:0.1μF(104Kと表示) 幅10mm、高さ11mm、厚さ5mm ・容量:0.22μF(0.22Kと表示) 幅13mm、18mm、厚さ7mm メーカによって容量の表示方法が違うものがあるので注意が必要です。 左の写真もポリエステル・コンデンサです。 容量は左から ・容量:0.0047μF(472と表示) 幅4mm、高さ6mm、厚さ2mm ・容量:0.0068μF(682と表示) 幅4mm、高さ6mm、厚さ2mm ・容量:0.47μF(474Kと表示) 幅11mm、14mm、厚さ7mm 電極の極性はありません。 ポリプロピレン・コンデンサ ポリエステル・コンデンサよりも高い精度が必要な場合に使用します。誘電体材料にポリプロピレン・フィルムを使用し、100KHz以下の周波数で使うならほとんど容量の変化が無いそうです。 写真のものは精度が±1%のものです。 メーカによって違うのかも知れませんが、容量表示のあとの記号が精度を表しているようです。Kが±10%、Fが±1% 写真左から ・容量:0.01μF(103Fと表示) 幅7mm、高さ7mm、厚さ3mm ・容量:0.022μF(223Fと表示) 幅7mm、高さ10mm、厚さ4mm ・容量:0.1μF(104Fと表示) 幅9mm、高さ11mm、厚さ5mm 容量の実測では測定器の誤差もあり、正確には言えませんが、だいたい+0.2%位でした。 このコンデンサも電極の極性はありません。 マイカ・コンデンサ 誘電体としてマイカ(雲母)を使用したコンデンサです。マイカは温度係数が小さく安定性に優れており、周波数特性も優れているため、高周波での共振回路とかフィルタ回路などに使用されます。また、絶縁耐圧も優れており、高圧回路にも利用されます。以前は真空管式の無線送信機などには良く使われました(使いました???)。 欠点としては容量がそれほど大きくなく、高価なことです。 左の写真はディップド・マイカ・コンデンサと呼ばれるもので耐圧が500Vあります。 容量は左から 47pF(470Jと表示) 幅7mm、高さ5mm、厚さ4mm 220pF(221Jと表示) 幅10mm、高さ6mm、厚さ4mm 1000pF(102Jと表示) 幅14mm、高さ9mm、厚さ4mm 電極の極性はありません。 メタライズド・ポリエステル・フィルム・コンデンサ(シーメンスMKT積層コンデンサともいう) 電極に蒸着金属被膜を使用したポリエステル・フィルム・コンデンサで、電極が薄いので、小型化ができます。 写真左から ・容量:0.001μF(1nと表示。nはナノ[10-9のこと]) 耐圧:250V 幅8mm、高さ6mm、厚さ2mm ・容量:0.22μF(μ22と表示) 耐圧:100V 幅8mm、高さ6mm、厚さ3mm ・容量:2.2μF(2μ2と表示) 耐圧:100V 幅15mm、高さ10mm、厚さ8mm このコンデンサは足が取れやすいので、取り扱いに注意が必要です。取れてしまうとどうにもなりません。捨てるしかありません。 電極の極性はありません。 可変容量コンデンサ 容量を変化できるコンデンサは主に周波数の調整などに使います。 左の写真のものはトリマーと呼ばれ、誘電体としてセラミック(磁器)を使用しています。他にもポリエステル・フィルムなどを誘電体にしたものもあります。 プリント板に実装するように作られています。 取り付け時の注意として、電極極性は無いのですが、容量を調節するネジ部分がどちらかのリード線につながっているので、リード線の片方がアースに接続する場合には、調節ネジがつながっているリード線をアース側とします。そうしないと、調節時のドライバ(ネジ回し)の容量が影響してしまい、うまく調節できません。 また、この種の調節を行うのには専用の調節用ドライバ(先端部以外がアクリルみたいな絶縁物で出来ている)がありますので、それを使った方が無難。 調節ネジがどっちのリード線につながっているかは、見れば分かるものもありますが、分からなければテスタなどで確認します。 上の写真左のものは 容量:20pF(3pF〜27pF実測) 太さ6mm、高さ4.8mm 他に、青色:7pF(2〜9)、白色:10pF(3〜15)、緑色:30pF(5〜35)、茶色:60pF(8〜72)があります。 上の写真右のものは 容量:30pF(5pF〜40pF実測) 幅(長)6.8mm、幅(短)4.9mm、高さ5mm 右の写真のものはバリコンと呼ばれる可変容量コンデンサでラジオのチューナなどに使われます。 写真左のものは空気を誘電体としたもので、3つの独立したコンデンサを組み合わせてあります。(3連バリコンと言う) 容量はそれぞれ2pF〜18pFまで変化しました。調整軸を回すと3つのコンデンサの容量が同時に変化します。 大きさは、幅、高さとも17mm、奥行き29mm(調節棒を除く) この種のバリコンは多種あり、目的に合わせて選びます。 写真のものは小型のものです。 写真右のものはポリエステル・フィルムを誘電体としたもので、2つの独立したコンデンサを組み合わせてあります。(2連ポリバリコンと言う) 容量は片方が12pF〜150pF、もう片方が11pF〜70pFまで変化しました。 大きさは、幅、高さとも20mm、奥行き11mm(調節棒を除く) 写真のものはそれぞれのコンデンサにさらに小型のトリマーが内蔵され、15pF位の微調節ができます。 |