目次電子回路工作素材集周波数感応スイッチ


周波数感応スイッチ 回路説明



波形変換回路


波形変換回路では、入力されるアナログ信号をパルス信号に変換します。
入力信号はインバータに入力し矩形波を作ります。

インバータは入力に何も接続しない場合にはハイレベル(H)状態になっています。その時、インバータ出力はローレベル(L)状態です。
R1の抵抗値が小さい場合にはW点はスレッショルド電圧(TH)以下になります。今回の場合R1として1KΩを使用しましたのでTH以下になっています。ただし、V点に接続する信号発生器の内部抵抗が高い場合にはTH以上となります。
W点がTHよりも高い場合、X点の信号のHとLが逆転しますが、回路動作には影響しません。どちらの場合でもZ点には入力信号と同じ周期のパルスが出ます。
以下の説明ではW点が無信号時にTH以下とします。

この状態で入力信号が加わると、インバータのスレッショルド電圧以上になった時に出力はL状態になります。(X点)

IV1で矩形化した信号はCおよびR2で構成する微分回路により、スパイク状の信号になります。(Y点)
微分回路の出力をインバータIV2に加え、波形整形を行います。
IV2の入力に加わる信号のスレッショルド以下の部分でIV2の出力はH状態となります。
このパルス状の信号の間隔は入力アナログ信号の周期と同じになっています。R1およびDは入力に過大な電圧が加わった場合、IV1を保護するためのものです。
DはツェナーダイオードでW点に+5V以上の電圧が加わると電流を接地に流し、W点が+5V以上の電圧になることを防ぎます。

インバータは種類(バイポーラ、LS、HC)により入力端子に何も接続しない場合の入力電圧、入力電流特性などが異なっています。
今回の回路ではLSタイプを使用しています。
LS以外ではうまく動作しませんでした。入力信号の発振器の出力インピーダンス(交流電流での抵抗)、R1の値などを調整すれば、他のタイプでも使えると思います。
また、インバータの入力特性は微分回路の特性にも影響を与えます。
ですから、Z点のパルス幅は単純なCR関係ではありません。Cの値を変化させてみましたが、パルス幅はあまり変化しません。 たぶん、Y点での無信号時の電圧とTHとの差があまりないので、Cを多少変えても変化しないのではないかと思います。





 周波数選別回路



入力されるパルス信号の間隔が規定のパルス間隔になっているかをチェックする回路です。
パルス間隔は入力信号の周波数によりますので、入力信号の周波数が規定の周波数になっているかをチェックすることになります。

パルス間隔をチェックするために74HC123というICを使用します。
このICは Retriggerable Single Shot と呼ばれるもので、1つのICに2つ入っています。
入力にパルスが加わると出力の状態を一定時間だけ反転する機能を持っています。

今回の回路では2つの Single Shot を使用し、片方を周波数の上限検出用、もう片方を下限検出用として使用しています。



Retriggerable Single Shot


反転するタイミングは入力パルスがH状態からL状態に変化した時です。
出力が反転している時間(td)はRとCの値により決まります。
74123の場合:td = 0.32RC( 1 + 0.7/R )


5KΩ < R < 50KΩ

74LS123の場合:td = 0.45RC


5KΩ < R < 260KΩ


td : nsR : KΩC : pF

74HC123の場合の詳しいデータは分かりません。
今回の場合、Rは50KΩ以下ですので問題はありません。




入力周波数が検出周波数以内の場合

まず、入力周波数が検出周波数の場合を説明します。
 tw :入力パルス幅
 td1:上限タイマ値(周波数の上限の意味なので値は短くなります)
 td2:下限タイマ値(周波数の下限の意味なので値は長くなります)
入力パルスの立ち下がり(H→L)でX点がLへ、Y点がHへと変化します。上限タイマ値を過ぎてから下限タイマ値のタイムアウト以内に次の入力パルスがあると、W点、X点およびY点が全てH状態になります。
この条件によりNAND1の出力Z点はtwの間だけL状態となります。
すなはち、入力パルスの間隔がtd1+tw以上、td2以下の間に入った時だけZ点がL状態になります。



入力周波数が検出周波数以上の場合


上限タイマは入力パルスの立ち下がりで更新されますので、入力パルス間隔がtd1以下の場合、その後もX点はH状態にはなりません。
ですから、Z点はH状態のままとなります。



入力周波数が検出周波数以下の場合


入力パルスの間隔がtd2以上(厳密にはtd2+tw以上)の場合、入力パルスのタイミングではY点はL状態となっています。
ですから、Z点はH状態のままとなります。





 持続検出回路

周波数感応スイッチ回路の入力信号は単一の周波数でないことがあります。
音声、音楽などのアナログ信号の場合、ある瞬間、検出周波数の信号が入ることもあります。
それによる誤動作を防止するのが持続検出回路です。
持続検出には電圧比較用のICを使用します。
X点に加わるパルス信号によりCに電荷を溜めます。電荷が溜まってくるとCの両端の電圧は上昇します。この上昇を電圧比較器で検出します。
電圧比較器の+入力端子には比較する基準電圧を設定します。
−入力端子に接続されたCの電圧が基準電圧以上となると比較器の出力はH状態からL状態へと変化します。
VRにより基準電圧を高くすると、検出電圧は高まり、Cの電圧が高くならないと出力は変化しません。
ですから、周波数検出範囲以内のパルス信号が連続して入力された場合のみ出力が変化します。
X点のパルス信号によりCに溜まった電荷はRを通して放電します。
ですから、X点のパルスエネルギーよりもRを通して放電するエネルギーが大きすぎるとCの電圧はほとんど上がりません。
入力パルス信号が無くなると、Cに溜まった電荷はRを通して放電し、Cの両端の電圧は下がります。
ダイオードDはCに溜まった電荷がX点が0Vになったときに逆流しないようにするためです。
Dが無いとCには電荷が溜まりません。





 出力回路


出力回路では一定時間以上の同一周波数を検出した場合、約500ミリ秒のH状態信号を出力します。
出力回路にはNE555を使用しています。
前述の持続検出回路により、一定時間以上の同一周波数入力検出をするとX点はH状態からL状態へと変化します。
C1とR1は微分回路を形成しています。X点がH状態からL状態に変化した時、Y点には0Vに近づくパルス信号が発生します。
この信号はNE555のトリガ信号となり、NE555の出力(Z点)は一定時間H状態となります。
NE555の出力がH状態となっている時間はC2とR2の値により決まり、以下の式で計算出来ます。

td = 1.1CR

NE555によるタイマ動作については「555タイマー」を参照して下さい。
今回の回路では約500ミリ秒に設定しています。