今回の回路の動作を以下で説明します。
電源投入直後 電源が投入されるとRxを通してTR1にベース電流が流れ、Ryを通してTR2にベース電流が流れ、TR1およびTR2はON状態になります。 また、R1 → Cy → TR2ベースと電流が流れ、コンデンサCyに電荷が溜まり始めます。同様にR2 → Cx → TR1ベースにも電流が流れ、コンデンサCxにも電荷が溜まり始めます。 TR1およびTR2がON状態になるとOUT1およびOUT2は接地されたと同じ状態(ほぼ0V)になります。これにより、CxおよびCyのOUT端子側の電位が0Vになります。 Cx、Cyには電源投入時、若干の電荷が溜まるので、CxはTR1のベース電圧をマイナスに引き下げ、CyはTR2のベース電圧をマイナスに引き下げます。このベース電圧の引き下げが行われるとTRがOFF状態となるのですが、TR1またはTR2のどちらか早い方のみOFF状態となります。 例えば、X点の電圧が早く引き下げられたとすると、TR1はOFF状態になります。TR1がOFF状態となるとR1 → Cy → TR2ベースと電流が流れ続け、TR2はOFF状態にはなりません。 出力の反転(1) トランジスタはベース電流が流れるとコレクタの電流も流れる動作をします。このときベース電流のhFE倍のコレクタ電流を流すことが出来ます。しかし、hFE倍のコレクタ電流が流れるわけではなく、TR1の場合、Vcc÷R1の電流が流れます。例えば、Vcc = 5V、R1 = 1KΩ、hFE (電流増幅率) = 100、IB(ベース電流) = 1mAとすると、計算ではIB × hFE = 100mAのコレクタ電流となりますが、実際にはVcc÷R1 = 12mAしか流れません。ベース電流を0.12mA以上流してもコレクタ電流は増加しません。この状態を飽和状態と言います。デジタル回路では0か1(ONかOFF)の状態を扱うので、トランジスタの動作としてONの場合は飽和状態で使います。トランジスタにベース電流を流した場合、ベースとエミッタ間の電圧(VBE)は約0.6Vになります。ベース電流が増加してもこの電圧はあまり変わりません。X点がCxによりマイナス電圧に引き下げられた後、CxにはRxを通して電流が流れます。これによりX点の電圧は次第に上昇します。X点が0.6Vの電圧になると、Rxを通して電流が流れ、TR1は急激にON状態に変化します。 TR1がON状態になると、Cyの電荷によりY点がマイナスに引かれます。(これを逆バイアスと言います)これによりTR2はON状態からOFF状態へと変化します。この状態はTR2のVBE (Y点)が約0.6Vになるまで持続します。Y点がマイナス電圧になるのでトランジスタのVEB耐電圧が重要です。2SC1815の場合VEBが5Vですので、コンデンサに蓄えられる電圧が5Vを越えるような使い方はできません。今回の回路の場合、電源電圧が5V、負荷のLEDで2V、トランジスタのベースとエミッタ間で0.6Vとすると、コンデンサの電圧は5-2-0.6=2.4Vになります。実測では約3V弱でした。 TR2がOFFになるとR2を通してCxに電荷が溜まり始めます。これは次の周期にTR1を逆バイアスするための準備になります。 R2とCxは積分回路です。そのためTR2がOFFとなってもOUT2は急激には立ち上がりません。 R2の値が大きいとOUT2の立ち上がりは矩形とならず、積分曲線になります。(立ち上がりがなまっていると言います) TR1の場合のR1も同様です。 Y点はRy → Cy → TR1に流れる電流によりCyに電荷が溜まり、徐々に上昇します。 出力の反転(2) Y点が0.6VになるとTR2がON状態に変化します。TR2がON状態になるとCxの電荷により、X点が逆バイアスされ、TR1はOFF状態に変化します。 CyにはR1を通して電荷が蓄えられ、TR2の逆バイアスの準備がされます。 X点はRx → Cx → TR2を通してCxに電荷が溜まり、徐々に上昇します。 この状態はX点が約0.6Vになるまで継続します。 出力の反転(3) X点が0.6VになるとTR1がON状態に変化します。TR1がON状態になるとCyの電荷により、Y点が逆バイアスされ、TR2はOFF状態に変化します。 CxにはR2を通して電荷が蓄えられ、TR1の逆バイアスの準備がされます。 Y点はRy → Cy → TR1を通してCyに電荷が溜まり、徐々に上昇します。 この状態はY点が0.6Vになるまで継続します。 以上で「出力の反転(1)」で説明した状態になりました。以後、この動作を繰り返します。 |