目次→事例集→車で活用する電子/電気回路→ドアロック・リモコン
タイミング回路の基本形 今回の回路の基本形は左の回路です。 入力(IN)の電圧が0Vから+12Vに変化するとR1→C1→TR1のベース→TR1のエミッタ→接地というように電流が流れます。この電流によりコンデンサC1に電荷がたまり始めます。コンデンサに電荷がたまるとコンデンサの両端の電圧が上がるため電流が減少します。なぜ電流が減少するかというと、INと接地の間の電圧が12Vとした場合、抵抗器R1に流れる電流は抵抗器にかかる電圧を抵抗値で割った値になります。たとえば、C1に電荷がたまっていない場合、C1の電圧は0VでR1にかかる電圧はほぼ12Vになります。厳密にはトランジスタのベースとエミッタ間の電圧(約0.6V)だけ少ない値になりますが、ここではこの値は無視します。抵抗値を3.3kΩとすると抵抗器に流れる電流は12V/3300Ω=0.0036A=3.6mAになります。C1に電荷がたまるにつれてC1の電圧が上昇します。たとえば、C1の電圧が5Vに上昇したとします。すると、抵抗器にかかる電圧は12V-5V=7Vになります。ですから、抵抗器に流れる電流は7V/3300Ω=0.0021A=2.1mAになり、先ほどの値に比べると減少しています。最終的にC1に電荷がたまり終わるとC1に流れる電流は停止します。 次にトランジスタの動作ですが、トランジスタはベースに電流が流れている場合、コレクタからエミッタに電流が流れます。ですから、C1に電荷がたまりつつある状態でベースに電流が流れているときだけコレクタからエミッタに電流が流れ、リレー(RL1)が動作することになります。C1に電荷がたまってベース電流が流れなくなるとコレクタ電流も流れなくなり、リレー(RL1)は動作しなくなります。すなわち、入力(IN)に12Vが連続してかけられていても、リレー(RL1)は一定時間しか動作しないことになります。 R1の値はベース電流によって決めます。それではベースにどのくらいの電流を流したら良いのでしょうか。トランジスタには電流増幅率(hFE)があります。これはベースに流れる電流のhFE倍の電流をコレクタに流し得るというものです。コレクタに流れるのではなく、流し得る値です。たとえば、hFEが100のトランジスタがあったとします。R1を3.3kΩでC1にまだ電荷がたまっていない場合、(12V-0.6V)/3300Ω=0.0035A=3.5mAがベース電流になります。hFEを100とするとコレクタ電流は350mAになります。しかし、コレクタに流れる電流はコレクタに接続されている回路により決まります。今回の場合、リレー(RL1)がつながれているので、RL1に流れる電流以上のコレクタ電流は流れません。実際にはRL1には30mAくらいの電流しか流れません。ですから、今回の回路ではベースに3.5mAの電流が流れてもコレクタにはRL1のために30mAしか電流は流れないということです。ベース電流を余分に流しているように思えますが、これはトランジスタを完全にON状態にするために余分に流しているのです。計算通りにベース電流をRL1の1/100の0.3mAとしてしまうとトランジスタが完全にはON状態にならず、コレクタとエミッタ間が抵抗を持ってしまい、余分な電力がトランジスタで消費されてしまうことになります。 リレー(RL1)が動作する時間はコンデンサC1の値によって決めます。この値は計算で算出するのは難しく、コンデンサを変えながら希望する時間だけリレーが動作する値を選びます。計算で出せないことはないのですが、実際に試してみたほうが早いです。 コンデンサの放電回路 タイミング回路ではコンデンサに電荷がたまる時間でタイミングを作り出しています。コンデンサにたまった電荷を放電させないと、次にタイミング回路を動作させるときにリレーが動作しません。そこで、入力が無くなった時点でコンデンサにたまった電荷を放電させる回路が必要になります。 左の図はドアのロック回路です。TR2がOFF状態のときにはR6→R7→C2→TR3と電流が流れ、C2が充電されます。次にTR2がON状態になるとC2にたまった電荷はR7→TR2→接地→R8と流れ、放電されます。トランジスタではエミッタからベースには電流は流れないので、R8が必要です。 R6とR7を分けずにC2とR7の接続点にトランジスタTR2のコレクタを接続してもかまいません。そのほうがコンデンサの放電を速めることができます。今回の回路ではC2の放電電流を抑えるためにR6とR7を分割しましたが、R8があるのでその必要はありません。 このドア・ロック回路は先ほどの基本回路と入力の条件が異なります。入力が+12Vから0Vに下がったときに一定時間リレーが動作します。要はTR2がインバータの働きをしています。 左の回路図はドア・ロック解除回路からD1とR2を省いた回路図です。この場合、受信機のスイッチが切れるとC1にたまった電荷はR1→R4→TR2→接地→R3を通して流れます。そのため、TR2はすぐにはOFF状態にはならず、リレー(RL2)がすぐに動作しません。さらに、C2に流れる電流も少ないため、リレー(RL2)の動作もゆっくりしたものとなり、期待する動作をさせることができません。 そこで、D1とR2を追加するとC1の放電電流はR2→GND→R3と流れ、ドア・ロック回路には流れないので、ドア・ロック回路を期待通りに動作させることができます。 |